AIソリューション > 不動産業界AI活用コラム > 重説・契約・査定 > IT重説対応物件の進め方|必要な機器・書面の準備と当日の実施手順を徹底解説
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「IT重説対応」を掲げる前に、準備の全体像を押さえる
遠方の顧客や来店が難しい顧客に向けて「IT重説対応物件」として案内したいものの、いざ始めようとすると「どんな機器がいるのか」「書面はどう渡すのか」「当日の流れはどうなるのか」で手が止まりがちです。IT重説は宅地建物取引業法に基づく正式な説明手段で、国土交通省が実施要件と手順を実施マニュアルで示しています。要件を外すと対面と同様に扱われないため、準備の全体像を先に押さえることが大切です。
この記事でわかること
- IT重説に必要な機器・通信環境・書面の準備物
- 事前準備から当日説明までの6ステップの手順
- 通信トラブルや本人確認でつまずかないための対処法
IT重説そのものの定義や対面との違いは、IT重説とはで先に確認しておくと理解がスムーズです。
準備するもの(機器・環境・書面)
機器と通信環境
国土交通省の実施マニュアルでは、IT重説に求められるIT環境として次のものが挙げられています。特別な専用機器は必須ではなく、すでに社内で使っている端末でも要件を満たせば利用できます。
| 準備物 | 求められる水準 |
|---|---|
| 端末 | PC・タブレット・スマートフォン等(ベンダーがセキュリティサポートを行うOS) |
| 画面 | 宅建士証の記載や図面を視認できる大きさ・解像度。電子書面で行う場合は書面と宅建士の映像を同時に確認できること |
| カメラ・マイク・音響機器 | 映像・音声が判別できる性能(宅建士側は宅建士証や図面を鮮明に映せる解像度) |
| インターネット回線 | 映像と音声を一連のものとして送受信でき、その品質を説明の開始から終了まで継続して維持できること |
| ソフト | 双方向でやりとりできるテレビ会議等の機能を持つサービス。録画する場合は対応可否も確認 |
| 予備の連絡手段 | 映像・音声が途切れたときに備え、説明用ソフト以外の連絡手段(電話等) |
書面と資格
説明を行うのは宅地建物取引士です。宅建士が記名した重要事項説明書(35条書面)と添付書類を、説明に先立って相手方の手元に届けておく必要があります。紙で郵送するか、相手方の承諾を得たうえで電子書面として提供するかを選べます。
当日までの実施手順(6ステップ)
- 意向確認と相手方のIT環境チェック:IT重説で行うことの承諾を得て、相手方の端末・OS・必要なアカウントなどを事前に確認します。
- 重要事項説明書の事前送付:宅建士が記名した重要事項説明書と添付書類を事前に届けます。相手方が事前に読めるよう、交付から一定期間を置いて実施日を設定するのが望ましいとされています。
- 実施直前の環境確認:双方の映像・音声が確認できること、相手方の手元に書面があることを開始前に確かめます。
- 宅建士証の提示と視認確認:宅建士証を画面に提示し、相手方に記載氏名を読み上げてもらうなどして、視認できたことを確認します(名義貸し・なりすまし防止)。
- 重要事項説明の実施:画面共有で説明箇所を相手方の画面にも示しながら説明し、質疑応答を行います。
- 書面の交付:紙の場合は宅建士が記名押印した書面を交付。電子交付する場合は、相手方の承諾のもと、出力して紙を作成できること・改変防止措置(電子署名やタイムスタンプ)を満たした電子書面を提供し、到達と閲覧可否、文字化けがないことを確認してもらいます。
なお、IT重説と書面の電子化は独立して選べます。IT重説で説明しても重要事項説明書は紙のまま、という運用も可能です。
つまずきやすいポイントと対処
| 症状 | 対処 |
|---|---|
| 説明中に映像が見えない・音声が聞き取れない | 宅建士はいったん説明を中断し、原因を解消してから再開する。電波の良い場所への移動や、固定回線への切り替えを試みる |
| 通信トラブルが解消しない | 無理に続けず中止する。当事者の希望により、できなかった残りの部分のみを対面の重説に切り替える対応も可能 |
| 接続できない・連絡が取れない | 接続時間を事前に協議して決め、説明用ソフト以外の連絡手段(電話等)を用意しておく |
| 宅建士証の文字が相手方の画面で読めない | カメラの解像度を事前に確認し、実施前に宅建士証が鮮明に映るかをテストする |
| 電子書面が文字化け・文字欠けする | 提供後に、到達・閲覧可否・文字化けがないことを相手方に確認してもらう |
安全・コンプライアンス上の注意
本人確認は機械任せにしない
重要事項説明は契約当事者本人に対して行うことが前提です。特に売買取引(媒介・代理を含む)では、犯罪収益移転防止法に基づく本人確認が必要です。画面越しの確認に少しでも疑問があれば、対面に切り替える判断を宅建士が行います。
録画は義務ではないが、扱いに注意
IT重説で録画・録音は必須要件ではありません。トラブル時の確認手段として有効ですが、行う場合は利用目的を可能な限り明らかにし、宅建業者と相手方の双方の了解のもとで実施します。記録は個人情報保護法および同ガイドラインに則って管理します。社内の保管ルールづくりは、AI利用ガイドラインの作り方の考え方も参考になります。
電子交付には相手方の承諾が必要
重要事項説明書を電子書面で提供するには、提供方法やファイル形式を示したうえで、記録に残る形で相手方の承諾を得る必要があります。承諾後でも相手方は拒否でき、その場合は電磁的方法で提供できません。35条書面・37条書面には宅建士の記名が必要な点も忘れないようにします。
効果の目安と、AIで準備工程を軽くする発想
国土交通省は、IT重説により遠隔地の顧客の移動・費用の負担が軽減され、日程調整の幅が広がる効果が期待されるとしています。一方で、具体的な時間短縮率などの公的な数値は公表されていないため、効果は自社の取引形態に照らして見積もるのが現実的です。
IT重説の手間の多くは、当日よりむしろ「事前の書面準備」に集中します。重要事項説明書のドラフト作成や物件資料の読み取りといった準備工程は、AIスマート重説の仕組みを使って軽くする選択肢もあります。ただし、AIが作成した書面の内容確認は必ず宅建士が行うことが前提です。
まとめ:要件を満たす運用を「型」にして対応物件を増やす
IT重説対応物件を増やす近道は、双方向環境・宅建士証の提示・書面の事前交付という要件を満たした運用を、社内の「型」として定着させることです。準備物のチェックリストと当日の6ステップ、トラブル時の対処をマニュアル化しておけば、担当者が変わっても同じ品質で実施できます。まずは賃貸更新や遠方の顧客など、効果が出やすい契約から小さく始め、運用を固めながら対応物件を広げていきましょう。


