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バーチャルステージングで足してよいのは家具と小物まで。部屋と周りは変えない
バーチャルステージングとは、空室の写真に家具や小物をCGやAIで合成し、そこで暮らしたときの様子を伝える手法です。「バーチャルホームステージング」「AIホームステージング」も同じものを指します。
不動産広告に使えるのは、部屋や周りを変えずに家具・小物だけを合成し、CGのイメージであることを伝える使い方までです。家具が物件に付かない旨も添えます。床・壁・建具・設備や窓からの眺望を変える加工、電柱・電線を消す加工は、「AIで加工しています」と注記しても広告に使えません(首都圏不動産公正取引協議会「公取協通信」2025年12月号)。
AIで短時間に作れるようになって変わったのは、画像を用意する手間です。広告のルールは変わっていません。浮いた時間を、元の写真と見比べる確認に回すのが現実的な使い方です。
この記事でわかること
- バーチャルステージングとは何か、実物のホームステージングとの違い
- AIで合成してよい範囲と、注記を付けても使えない加工の線引き
- 注記に書く内容と、そのまま使える文例
- 部屋を変えさせないAIへの指示と、反響につなげる出し方
- 掲載前に確認する7項目
バーチャルステージングとは?実物のホームステージングとの違い
ホームステージングは、売り出す部屋に実際の家具を運び込み、モデルルームのように整える方法です。バーチャルステージングは同じことを写真の上で行います。家具の搬入も撤去もないので、空室のまま広告を始められます。
作り方は、デザイナーがCGで家具を配置する方法と、写真をアップロードしてAIに家具を置かせる方法の2つに分かれます。たとえばアットホームは不動産会社向けに、AIが約1分で家具を配置した画像を生成するサービスと、デザイナーがCGでコーディネートし納品まで4営業日が目安のサービスを用意しています(アットホーム公式サイト、2026年9月時点)。三井のリハウスは、ホームステージング資格者の監修のもとで室内の画像にCGで家具や小物を配置する取り組みを紹介しています。
3つの方法を、準備と向く場面で比べると次のとおりです。
| 方法 | 何をするか | 準備と時間 | 向く場面 |
|---|---|---|---|
| ホームステージング(実物) | 部屋に実際の家具を搬入して整える | 家具の手配・搬入・撤去が必要 | 内見で部屋そのものの印象を高めたい物件 |
| バーチャルステージング(デザイナーのCG) | デザイナーが写真にCGで家具を配置する | 依頼から納品まで数営業日(例:4営業日が目安) | 見せ方にこだわりたい物件や、収納・キッチン・庭など居室以外の写真 |
| バーチャルステージング(AI生成) | 写真をアップロードし、AIが家具を配置する | その場で生成(例:約1分)。確認は人が行う | 掲載物件が多く、1件ずつ外注しにくい場合 |
見落としやすいのは、AIが指示した家具だけを足すとは限らない点です。画像生成・編集のAIでは、窓の外の景色や壁のシミ、照明器具まで一緒に変わることがあります。作る手間が減った分、どこが変わったかを人が見つける仕事は残ります。
AIで合成してよいのはどこまで?OK・NGの線引き
不動産広告の写真には、不動産の表示に関する公正競争規約とその施行規則が関わります。公正競争規約は、景品表示法に基づいて認定を受けた業界の広告ルールです(消費者庁)。写真に関わる考え方は、次の3つにまとめられます。
- 写真や動画は、原則として取引する物件そのものを表示する。
- CGや完成予想図は、CGであることを明示して使い、物件の周りの状況を現況と違えて表示しない。
- 写真やCGで、物件の広さ・形・構造、設備、日当たりや眺望、周辺環境を実際より良く見せない。
宅地建物取引業法も、物件の規模や環境などについて著しく事実と違う広告や、実際より著しく優良だと誤認させる広告を禁じています(e-Gov法令検索)。この考え方を加工の種類に当てはめると、次の表になります。
| 加工 | 広告での扱い | 理由 |
|---|---|---|
| 空室に家具・小物を合成する | 条件付きで使える(家具・小物は実物に近い大きさにし、CGのイメージである旨を示す。家具が付かない旨も添える) | 部屋そのものは変えず、暮らし方の例を足すだけ |
| 暗い写真の明るさ・色味を整える | 日当たり・採光が実際より良く見えない範囲にとどめる。床・壁の色が変わるほど色味を変えない | 日当たり・採光を実際より良く見せると不当表示になる |
| 床材・壁紙・建具を変える | 使わない | 室内が実際と異なる写真と受け取られるおそれ |
| エアコン・照明・キッチンなどの設備を足す・変える | 使えない | 設備を実際より良く見せる表示になる |
| 壁の傷・汚れ・劣化を消す | 使わない | 室内の状態を実際より良いと受け取られるおそれ |
| 窓の外の景色を差し替える | 使えない | 眺望を実際と違えて見せる |
| 曇り空を青空にする | 使わない | 景観や日当たりを実際より良いと受け取られるおそれ |
| 電柱・電線・隣の建物を消す | 使えない(注記しても不可) | 物件の周りが実際と異なる写真になる |
| 引き伸ばし、小さめの家具、AIで写真の外側を描き足すなどで部屋を広く見せる | 使えない | 広さを実際より大きく見せる |
| 納戸・サービスルームにベッドや机を置いて居室のように見せる | 使えない | 居室でない部屋を居室と誤認させる |
電柱・電線の加工は、首都圏不動産公正取引協議会が「公取協通信」2025年12月号のQ&Aで取り上げています。電柱・電線を消すなど物件の周りが実際と異なる写真も、室内が実際と異なる写真も使えず、「※AIで加工しています」等の注釈を付けても表示できない、という回答です。
納戸の例は、同協議会の「公取協通信」2026年8月号に載っています。新築分譲マンションのホームページで、間取り図の「Service Room」にベッドなどの家具を描き、居室として使えるかのように見せた表示が、建築基準法上の居室ではないため不可として注意を受けました。規約は、建築基準法上の居室でない部屋を居室と誤認させるおそれのある表示を不当表示としています。間取り図の事例ですが、写真にベッドや机を合成する場合も同じ扱いになるおそれがあります。
迷ったときは、この写真を見た人が、部屋や周りを実際より良いと受け取らないかで考えます。
協議会の解説も、注記を付けても「消費者が表示から受ける印象」と実際のものに開きがあれば不当表示は避けられない、という立場です。内見で「写真と違う」と言われそうな加工はもちろん、気づかれにくい小さな変更でも、部屋・設備・眺望・周りに手を入れた加工は外します。
規約に家具の大きさの定めはありませんが、部屋の入口や共用廊下を通らない大きさの家具を置くと、その部屋では実現できない暮らしを見せることになります。実物に近く、運び込める大きさにとどめます。
「AIで加工しています」と書けば大丈夫?注記の役割と書き方
注記は、家具がCGであることを伝えるためのものです。部屋や周りを変えた加工を許してもらうためのものではありません。首都圏不動産公正取引協議会は「イメージフォト」「実際のものとは多少異なる場合があります」といった文言について、付記しても不当表示は避けられないと解説しています。
注記を付ければ使えるのは家具・小物の合成だけで、NGの加工は注記の有無にかかわらず使えません。
家具を合成した写真には、次の3点を押さえた注記を付けます。CGであることの明示は規約の考え方に沿うもので、家具が付かない旨は、物件に付いてくると受け取られないよう添えておくことをおすすめします。
- CGまたはAIで家具・小物を合成したイメージであること
- 家具・小物は物件に含まれず、価格や賃料にも含まれないこと
- どの写真が合成かわかるよう、合成した写真ごとに、写真の近くに読める大きさで入れること
三井のリハウスはサービス紹介ページで、空室の物件の画像に「この画像は、実際の室内にCGによる家具等を配置したものです。家具等は販売価格に含まれません。」と注記する例を示しています。賃貸と売買で使える文例を置いておきます。
次の文例に「イメージです」とあるのは、その文言があるから許されるという意味ではありません。どの写真が合成かを伝えるための注記です。
【賃貸】 ※この写真は、実際の室内にCG(AI)で家具・小物を合成したイメージです。家具・小物は付属せず、賃料に含まれません。 【売買】 ※この写真は、実際の室内にCG(AI)で家具・小物を合成したイメージです。家具・小物は販売価格に含まれません。
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AIにはどう指示する?部屋を変えさせないプロンプト
画像を編集できる生成AIに頼むときは、置くものより「変えないもの」を先に並べます。何も書かなければ、窓の外や壁の汚れまで手が入ることがあるためです。変えてはいけない部分を名前で挙げておくと、確認の段階で見つかる修正が減ります。
この空室の写真に、単身の会社員が暮らすことを想定した家具と小物を配置してください。 置いてよいもの:ベッド、デスクと椅子、ラグ、カーテン、小さな観葉植物 家具の大きさ:実物に近いサイズ。玄関や廊下を通って運び込める大きさ 変えないもの: ・床、壁、天井、ドア、窓枠、収納の扉 ・エアコン、照明器具、コンセント、キッチンなどの設備 ・窓の外の景色と空 ・部屋の明るさ、色味、広さ、写る範囲 ・壁や床の傷、汚れ 出力後、元の写真から変えた部分があれば箇条書きで教えてください。
最後の一文でAIに変更点を挙げさせても、その答えが正しいとは限りません。確認は必ず元の写真と並べて人が行います。AIで作った画像の権利や、他社の写真を使うときの注意は「不動産広告でAI画像を使う際の著作権と広告規制」で、明るさの補正など家具の合成以外の画像AIの使い方と注意は「不動産営業のAI活用術」で整理しています。
反響につなげるにはどう出す?
ステージング写真の役割は、部屋を豪華に見せることより、「この広さでこう暮らせる」とお客様が判断できる材料を増やすことです。反響への効果は物件やエリア、写真の出し方で変わるため、決まった数字は示せません。自社の物件で出し方を変えながら確かめていきます。
現況写真と並べて出す
合成した写真だけを並べると、内見で何もない部屋を見たお客様との間にギャップが生まれます。同じアングルの現況写真を隣に置くと、家具の置き方の一例として受け取ってもらえます。
想定する入居者・購入者に合わせて家具を選ぶ
単身向けの1Kならベッドとデスク、ファミリー向けならダイニングテーブルと子ども用の家具のように、誰がどう使う部屋かが伝わる家具を置きます。AIなら1枚の写真から複数の案を作れるので、ポータルの1枚目に使う写真を想定客に合わせて選べます。ただし、合成した写真をどこに何枚載せられるかは、ポータルサイトや媒体ごとの掲載ルールに従います。
家具の大きさで広さを伝える
お客様が知りたいのは「ダブルベッドが入るか」「4人掛けのテーブルが置けるか」です。実物に近い大きさの家具を置くと、図面の畳数だけでは伝わらない広さの感覚が伝わります。反対に、小さめの家具で余白を多く見せると、内見で「思ったより狭い」と感じさせる原因になります。
問い合わせへの返信と内見でも一言添える
問い合わせへの返信や内見の案内で「掲載写真の家具はCGのイメージです」と伝えておくと、当日の説明が短く済み、写真との違いで信頼を落とすことも防げます。
居住中の物件で「家具消し」を使ってもいい?
AIの機能には、入居者の家具を写真から消して空室のように見せるものもあります。ただ、家具の下や後ろにあった床や壁は元の写真に写っていないため、その部分はAIが描き足します。実際には傷や汚れがあるかもしれない場所を、きれいな状態で見せてしまうことになります。
三井のリハウスは居住中の物件で、実際の室内写真と並べたうえで、CGで作成した「空室リフォームイメージ」であり実際の室内には傷や汚れ等がある場合がある旨を注記しています。現況の写真の代わりではなく、現況の写真とセットで見せる「イメージ」として扱っている例です。注記を付ければ同じ加工をしてよい、という意味ではありません。
家具消しの画像を現況の写真の代わりに使うと、室内が実際と異なる写真になるおそれがあります。「イメージ」と注記しても、実際と違う印象が消えるとは限りません。使うかどうかは、広告を出す前に所属する団体や地区の不動産公正取引協議会に確認します。首都圏不動産公正取引協議会は不動産広告についての相談を電話・郵送・来訪で受け付けており、ほかの地域にも地区ごとの協議会があります。撮影や掲載は、入居者の了解を得てから進めます。
掲載前に何を確認する?7項目のチェックリスト
合成した写真は、作った人とは別の人が次の順で確認してから掲載します。
- 元の写真と並べ、床・壁・天井・建具・窓・設備が変わっていないか確認。
- 窓の外の景色、空、電柱・電線、隣の建物が元の写真のままか確認。
- 家具が実物に近い大きさで、部屋に運び込める大きさか。納戸やサービスルームにベッドや机を置いていないか。
- 家具のゆがみ、影の向きの不自然さ、壁にめり込んだ家具を拡大して確認。
- 合成した写真ごとに、CGのイメージである旨と家具が付かない旨の注記が読める大きさで入っているか。
- 加工前の写真、使ったツール、確認した人と日付を物件ごとに記録して保管。
- 掲載するポータルサイト・媒体ごとの掲載ルールを確認。
AIで写真を作る手間が減っても、この確認は省けません。手順を社内で決めておくと、担当者が替わっても同じ基準で判断できます。
まとめ
バーチャルステージングは、空室の写真に家具や小物を合成して暮らし方を伝える手法です。不動産広告で使えるのは家具・小物の合成までで、CGのイメージであることを写真ごとに伝え、家具が付かない旨も添えます。床・壁・設備・眺望を変える加工や、電柱・電線を消す加工は、注記を付けても使えません。
AIで画像を作るのは速くなりましたが、広告のルールは同じです。浮いた時間を元の写真との見比べに回し、部屋や周りを実際と違って見せる加工は、気づかれにくいものでも外す。この基準を社内でそろえておくと、写真で伝えられる情報を増やしながら、来店後の「写真と違う」を防げます。





