賃貸管理のAI活用|問い合わせ・修繕・オーナー報告で任せる範囲と人が持つ判断

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賃貸管理のAI活用|問い合わせ・修繕・オーナー報告で任せる範囲と人が持つ判断
本記事の情報は2026年9月時点のものです。AIサービスの機能・プラン名や各社の提供状況は変わることがあります。最新情報は各提供元の公式サイトでご確認ください。個別の契約や法令の判断は、専門家にご相談ください。

賃貸管理のAIは「文章を書かせる」より「記録を整えさせる」と効く

賃貸管理でAIを使いやすい業務は、入居者からの問い合わせ・クレームの一次対応、修繕の手配と巡回・点検の記録、原状回復や退去精算の説明文、オーナーへの定期報告の下書き、更新・解約の案内文です。反対に、原状回復の費用をどちらが負担するか、契約上どう扱うか、入居者の情報をどこまで使うかといった判断は、人が持ちます。

使いどころを考えるときに見落としやすいのが、記録の側です。登録を受けた賃貸住宅管理業者には、オーナーに管理業務の実施状況を定期的に報告する義務があり、その報告には入居者からの苦情の発生状況と対応状況も含まれます(国土交通省 賃貸住宅管理業法ポータルサイト、2026年9月時点)。

入居者対応のたびにAIで要約・分類した記録を残しておくと、それがそのままオーナー報告の材料になります。

返信文を1通速く書けることより、日々の対応を同じ型で残せることのほうが、報告の時期の手間を大きく左右します。

この記事は、賃貸管理会社の管理業務全体で「どこにAIを使い、どこを人が持つか」を整理する総論です。入居審査・賃料査定・退去予測のようにデータで判断を助けるAIは、途中で紹介する各記事で詳しく扱います。客付けから契約までの仲介業務は賃貸仲介×AIの記事をご覧ください。

この記事でわかること

  • 賃貸管理の業務ごとに、AIに任せやすいことと人が持つ判断
  • 入居者対応にAIを入れた管理会社・システム会社の例と、共通する設計
  • 問い合わせの記録、退去精算の説明文、オーナーへの定期報告に使えるプロンプト
  • 原状回復の負担区分や入居者情報など、AIに任せない判断と導入の進め方

賃貸管理の業務でAIはどこに使える?

賃貸管理の業務を、AIに任せやすい作業と人が持つ判断に分けると次のようになります。どの業務でも、AIが担うのは下書き・要約・分類・整理で、送る・決める・説明する部分は人が担います。

業務 AIに任せやすいこと 人が持つ判断
入居者の問い合わせ・クレーム よくある質問への回答、問い合わせ内容の要約と分類、返信文の下書き 緊急度、現地確認の要否、個別の事情への回答
修繕の手配 症状の聞き取り項目の整理、業者への依頼文、入居者への日程連絡文 工事の要否、業者の選定、費用の負担
巡回・点検の記録 写真と音声メモからの点検記録の清書 劣化や不具合の程度
原状回復・退去精算 精算内容の説明文、立会いの案内文 負担区分、特約の解釈、金額の確定
オーナーへの定期報告 日々の記録からの報告書の下書き、言い回しの調整 報告内容の確認、オーナーへの説明と質問への回答
更新・解約の事務 更新案内や解約後の手続き案内の文面、期日の一覧づくり 更新条件や賃料の見直し、契約上の扱い

「人が持つ判断」の列に並ぶのは、どれも契約書や現地の状況を見ないと決められないものです。イタンジは入居者対応のAI機能を発表した際、設備故障の確認のように現地の状態を目視で判断し、入居者と対面して状況を把握する業務はデジタルだけでは完結できない、と説明しています(イタンジ、2026年3月)。AIは、現場に行く前の情報集めと、戻ってきた後の文章づくりを引き受ける道具として考えると、使いどころを見誤りません。

入居審査の可否、更新時の賃料の見直し、退去の予兆といったデータを使う判断は、それぞれ入居審査AIの解説、AI賃料査定の仕組み、退去予測AIの解説で扱っています。

入居者の問い合わせにAIはどこまで答えさせてよい?

入居者対応は、賃貸管理のなかで、管理会社やシステム会社によるAI活用の公式発表が相次いでいる業務です。発表を並べると、AIに任せる範囲の決め方に共通点があります。

管理会社・システム会社の導入例

次の表は、入居者からの問い合わせにAIを使う3つの取り組みを、AIが担う範囲と人への引き継ぎ方で比べたものです。

会社(サービス) 時期 AIが担うこと 人への引き継ぎ・範囲の絞り方
旭化成不動産レジデンス(入居者アプリ「My Concier」) 2025年11月導入 入居者の質問に、意図に合う回答にたどり着くまで会話で答える AIで解決できない質問は問い合わせフォームへ誘導し、AIが要約した会話内容を引き継ぐ
イタンジ(ITANDI 賃貸管理) 2026年3月提供開始 物件情報や過去のやり取りを参照して回答案を示し、確認ポイントや経緯を整理する AIは担当者向けに回答案を出し、入居者への応対は担当者が行う
GMO ReTech(GMO賃貸DX 入居者アプリ) 2026年5月発表(8月提供予定) 管理会社が登録した「よくある質問」を参照して入居者に自動で回答する 回答の範囲を登録済みの業務データに限り、誤回答のリスクを抑える

旭化成不動産レジデンスは導入の背景として、入居者からの問い合わせ対応の半数以上をオペレーターの有人対応が担い、電話が集中する時間帯につながりにくくなっていたことを挙げています(旭化成、2025年11月)。問い合わせの窓口が混み合う悩みは、規模の大小を問わず管理会社に共通するものです。

3つの取り組みは、AIに何でも答えさせる設計にはなっていません。答える範囲を登録した情報に絞る、担当者向けの下書き役にとどめる、答えられない質問を人へ渡す、のいずれかでAIの守備範囲を決めています。自社で試すときもこの順番で考えると、誤回答が起きにくくなります。ゴミ出しのルールや設備の使い方のように答えが決まっている質問から任せ、設備故障や騒音のように現地確認や個別の事情が絡む問い合わせは人に渡します。

なお、3社の発表はいずれも効果を数値で示していません。導入を検討するなら、他社の数字を探すより、自社の問い合わせ件数と対応時間を先に記録しておくほうが判断の材料になります。

チャットボットの型の選び方は問い合わせ自動応答チャットボットの選び方、電話の一次対応はAI電話(ボイスボット)の解説、LINEでの自動返信はLINE公式アカウント×AIの記事、管理規約や社内マニュアルをAIに参照させる仕組みはRAGの解説で扱っています。外国籍の入居者への多言語対応は外国人対応をAIで多言語化する手順が参考になります。

問い合わせを「報告に使える記録」に整えるプロンプト

専用のシステムがなくても、汎用の生成AIで対応の記録を整える作業はすぐに始められます。入居者の氏名や部屋番号は入れず、内容だけを渡します。

あなたは賃貸管理会社の事務担当です。次の対応メモを、オーナーへの定期報告に使える記録の形に整えてください。

【記録の形】
・受付日時
・申し出た人の立場(入居者/近隣の方/その他)
・区分(苦情/設備の不具合/手続きの問い合わせ/その他)
・内容の要約(2行以内)
・対応状況(対応済み/対応中/未着手)と、対応した内容
・次にやること

【対応メモ】
(ここにメモを貼る。氏名・部屋番号・電話番号は書かない)

【注意】
・メモに書かれていないことは補わず、「不明」と書いてください。
・苦情にあたるかどうか判断がつかないときは、区分を「担当者が判断」としてください。

記録の項目は、国土交通省の「賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律の解釈・運用の考え方」(2026年9月時点の最新版)に合わせています。同文書は、単純な問い合わせには記録・報告の義務はないとしたうえで、苦情を伴う問い合わせについては、発生した日時、申し出た人の属性、苦情の内容、対応状況などを記録し、報告する必要があるとしています。苦情にあたるかどうかの線引きはAIに任せず、「担当者が判断」になったものを人が決めます。

修繕の手配と巡回・点検の記録は、現場のメモを伝わる文章に変える

修繕や点検の業務でAIが役に立つのは、現場の判断そのものではなく、その前後の文章づくりです。

  • 修繕の受付……入居者から「エアコンが動かない」と連絡があったとき、型番、症状が出た時期、異音やエラー表示の有無など、業者に伝える聞き取り項目をAIに整理させる。
  • 業者への依頼と入居者への連絡……聞き取った内容から、業者への依頼文と入居者への日程連絡文を下書きさせる。
  • 巡回・点検の記録……現場でスマホの写真と音声メモを残し、事務所に戻ってからAIに点検記録の形へ清書させる。

写真を渡して「劣化の程度を判定して」と頼む使い方は避けます。写真は撮り方で見え方が変わり、AIの判定には誤りが混ざることがあるためです。傷みの程度や工事の要否を担当者が現地で見て決めておけば、オーナーに修繕を提案するときの根拠も、人が確認した事実に基づいたものになります(弊社の実務上の目安です)。現場で音声メモを残す方法は音声入力の記事にまとめています。

原状回復・退去精算でAIに任せてよいのはどこまで?

退去精算は、入居者との食い違いが起きやすい業務です。AIは精算内容を丁寧に伝える説明文の下書きに向いていますが、費用をどちらが負担するかの判断は任せません。

国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」(平成23年(2011年)8月再改訂版)は、経年変化や通常の使用による損耗の修繕費用は賃料に含まれるものとし、原状回復は借りた当時の状態に戻すことではないと整理しています。ガイドラインは契約を結ぶときの参考として示されたもので、すでに契約を結んでいる場合は、現在の契約書が有効と考えられるため契約内容に沿った取扱いが原則とされています。ただし、契約書の条文があいまいな場合や、契約締結時に何らかの問題があるような場合は、ガイドラインを参考にしながら話し合うよう同省は案内しています。

借主に不利な内容の特約については、同ガイドラインのQ&Aが、近年の最高裁判例も踏まえ、少なくとも満たす必要があるとされる要件として、次の3つを挙げています。

  1. 特約の必要性があり、かつ、暴利的でないなどの客観的・合理的な理由があること
  2. 借主が、特約によって通常の原状回復義務を超えた修繕等の義務を負うことを認識していること
  3. 借主が、特約による義務負担の意思表示をしていること

Q&Aは、特約が成立していても、借主に不利な特約であれば有効であるとは限らない、とも述べています。ガイドラインの一般論、契約書の条文、特約が成立した経緯、立会いで確認した現況が重なり合って結論が決まる、ということです。

ここに、AIに精算の説明を書かせるときの落とし穴があります。

AIに「ガイドラインに沿って説明して」とだけ頼むと、その物件の契約書にある特約や、立会いで確認した現況を知らないまま、一般論で負担区分を書いてしまいます。

説明文を作らせるときは、負担区分と金額を人が決めてから、その結果と根拠(契約書の該当箇所、立会いの記録)だけを渡し、相手に伝わる言葉に整えさせます。

あなたは賃貸管理会社の担当者です。退去された入居者の方へ送る、精算内容の説明メールの下書きを作ってください。

【担当者が確認済みの精算内容】
・【項目】:【借主負担/貸主負担】。理由は【立会いで確認した内容、または契約書の該当箇所】。
・【項目】:【借主負担/貸主負担】。理由は【同上】。

【条件】
・上に書いた項目・負担区分・理由だけを使い、ほかの項目の負担区分を推測して書かないでください。
・金額は書かず、「別紙の精算明細のとおり」と書いてください。
・丁寧で、相手を責める印象にならない文面にしてください。
・質問や相談があるときの連絡方法を案内する一文を入れてください。

金額を本文に書かせないのは、AIが数字を書き換えたり計算し直したりする余地をなくすためです。明細は人が作った書類をそのまま添付します。契約書の条項をAIで下チェックする方法は契約書のAIチェックの解説で扱っています。

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オーナーへの定期報告はAIで下書きできる?

オーナーへの報告書づくりは、AIの効果を実感しやすい業務です。ただし、報告書を速く書けるかどうかは、材料になる記録がそろっているかで決まります。

賃貸住宅管理業法は、登録を受けた賃貸住宅管理業者に、委託者であるオーナーへの定期報告を義務づけています。国土交通省のポータルサイトは報告する内容として、家賃等の金銭の収受状況や維持保全の実施状況といった管理業務の実施状況と、入居者からの苦情の発生・対応状況を挙げています。「解釈・運用の考え方」は、報告書の説明方法は問わないとしつつ、オーナーと双方向でやりとりできる環境を整え、オーナーが内容を理解したことを確認するよう求めています。報告書の文章をまとめる作業はAIに手伝わせても、オーナーが内容を理解したかを確かめ、質問に答える部分は担当者の仕事として残る、ということです。

あなたは賃貸管理会社の担当者です。次の記録をもとに、オーナーへの管理業務の報告書の文章部分を下書きしてください。物件名は書かず「対象物件」と書いてください。

【今期の記録】
・家賃等の収受状況:(担当者がまとめた状況を書く)
・維持保全の実施状況:(点検・修繕の記録を貼る)
・入居者からの苦情と対応状況:(問い合わせの記録のうち、区分が「苦情」のものを貼る)

【条件】
・記録に書かれている事実だけを使い、推測や見込みは書かないでください。
・対応中の案件は、これまでの対応と次の予定を分けて書いてください。
・専門用語は言い換え、オーナーが読んで分かる文章にしてください。
・最後に、オーナーに確認したいことがあれば箇条書きで挙げてください。

報告の時期にまとめて思い出しながら書こうとすると、記録の抜けを文章で埋めたくなります。AIも材料が足りないと自然な文章で補ってしまうため、「記録にない事実は書かない」と指示したうえで、送る前に元の記録と照合します。報告書を速く仕上げる近道は、報告の時期の作業ではなく、毎日の対応記録を同じ型でそろえておくことです。

更新・解約の事務は、案内文と期日の一覧をAIに任せる

更新と解約は、決まった時期に決まった案内を出す業務です。AIには、更新案内の文面、解約の連絡を受けた後の手続き案内(立会いの日程調整、鍵の返却、精算の流れ)、契約ごとの期日の一覧づくりを任せられます。

案内文をAIで作る利点は、速さより抜けの少なさにあります。立会いの日時、鍵の返却方法、連絡先のように毎回入れるべき項目を指示文に固定しておけば、担当者が変わっても案内の中身がそろいます。

一方で、更新時の賃料や条件をどう見直すか、契約上どう扱うかは人が決めます。更新時の賃料の考え方はAI賃料査定の記事、退去が近そうな入居者に早めに手を打つ考え方は退去予測AIの記事が参考になります。

賃貸管理の業務でAIを使うイメージ

AIに任せない判断は?

賃貸管理でAIを使うときに、人が持ち続ける判断は次の4つです。

原状回復の負担区分と特約の解釈

負担区分は、契約書の条文や特約、特約が成立した経緯、立会いで確認した現況によって変わります。AIが書いた一般論をそのまま入居者に送ると、契約内容と食い違う説明になりかねません。判断に迷う事案は、社内の責任者や専門家に相談します。

契約上の判断と、オーナーへの重要事項説明

更新の条件、契約の解除、入居者とのトラブルの法的な扱いは、契約書と事実関係を見て人が判断します。

管理受託契約を結ぶ前にオーナーへ行う重要事項説明について、国土交通省の「解釈・運用の考え方」(2026年9月時点の最新版)は、業務管理者の管理及び監督の下に行われる必要があり、委託を受けようとする賃貸住宅管理業者自らが行う必要がある、としています。後者は説明を他の事業者に任せないという趣旨で、人とAIのどちらが説明するかを直接定めた規定ではありません。ただ、業務管理者が管理・監督する前提で組み立てられている制度の趣旨から考えると、AIで説明資料を下書きしても、オーナーへの説明と質問への回答は担当者が責任を持って行うのが自然な運用です。

国土交通省の調査検討業務の報告書(令和6年度 不動産管理業に関する実態分析に係る調査検討業務、2025年3月)には、帳簿はAI化・PDF化したシステムのデータで代用できる、AIが内容に基づいて電子契約や重要事項説明をできるようにしてほしい、といった事業者の意見が載っています。同じ箇所には、オーナーとのトラブルを防ぐために資格者だけが対応するよう要件を上げていくべきだという意見もあり、手続きを軽くしたいという声と、説明の担い手の要件を厳しくしたいという声の両方が寄せられています。

入居審査の可否

入居審査にAIのスコアを使う場合も、可否を決めるのは人です。国籍などの属性をそのままスコアの入力に使うと、差別的な入居拒否につながるおそれがあります。詳しくは入居審査AIの解説で扱っています。

入居者とオーナーの情報の扱い

管理会社は、入居者の氏名や連絡先、家賃の支払い状況、苦情の内容など、多くの個人情報を預かっています。個人情報保護委員会は2023年6月の注意喚起で、個人情報を含むプロンプトを生成AIに入力する場合は利用目的の達成に必要な範囲内かを十分に確認すること、個人データが応答以外の目的で扱われる場合に備えて提供事業者が機械学習に利用しないこと等を確認することを求めています。賃貸住宅管理業法も、登録業者に秘密を守る義務を課しています。

実務では、入居者の氏名・部屋番号・連絡先を伏せて状況だけを渡すこと、業務で使うAIは会社として契約したアカウントに限ることの2点を先に決めておきます。OpenAIは、会社向けプランの「ChatGPT Business」(2025年8月にChatGPT Teamから名称変更)について、ビジネスデータを既定で学習から除外すると説明しています(OpenAI ヘルプ、2026年9月時点)。ただし、学習に使われない設定であっても、どこまでの情報を入力してよいかは会社のルールで決める問題です。詳しくはAIにお客様の個人情報を入れてよいかの解説をご覧ください。

どの形で入れる?汎用AI・管理システムのAI機能・入居者向けチャットボット

賃貸管理にAIを入れる形は、大きく3つあります。どの業務から始めるかで向いている形が変わるため、向いている業務と注意点を並べます。

形 向いている業務 注意点
汎用の生成AI(ChatGPT・Claude・Geminiなど) 記録の整理、報告書や案内文の下書き 会社として契約したアカウントで使い、入居者の情報は伏せる
管理システムに組み込まれたAI機能 物件情報や過去の対応履歴を参照した回答案づくり 自社が使うシステムの対応状況と、AIが参照するデータの範囲を確かめる
入居者向けのチャットボット ゴミ出しや設備の使い方など、答えが決まった質問への自動回答 答える範囲を登録した情報に限り、解決しない質問を人へ渡す出口を用意する

すぐに始められるのは汎用の生成AIですが、物件情報や過去の対応履歴と結びつける使い方は、管理システム側の機能のほうが得意です。先に汎用のAIで記録と文章の型を作っておくと、システムのAI機能を比べるときに「自社のどの業務の、どの手間を減らしたいか」を具体的に言えるようになります。

賃貸管理にAIを導入する進め方は?

管理業務へのAIの導入は、次の5つの手順で進めます。いきなりシステムを入れ替えるより、今の業務の記録から始めるほうが、つまずいたときの影響が小さく済みます。

  1. 問い合わせの種類と件数を1か月記録する。
  2. 答えが決まっている質問と、人が判断する質問を分ける。
  3. 業務で使うアカウントと、入力しない情報を社内で決める。
  4. 記録の整理と文章の下書きのうち1業務だけ試し、1件あたりの時間を比べる。
  5. 整えた記録をオーナーへの報告に使い、次に任せる業務を決める。

手順1の記録は、AIを入れる前後の比較の基準になるだけでなく、チャットボットに答えさせる範囲を決める材料にもなります。社内ルールの作り方はAI利用ガイドラインの作り方、時間の記録から費用対効果を出す方法はAI導入の費用対効果の測り方で解説しています。

まとめ

賃貸管理でAIが力を発揮するのは、入居者の問い合わせへの一次対応と記録、修繕や点検の記録の清書、退去精算の説明文、オーナーへの定期報告の下書き、更新・解約の案内文です。入居者対応にAIを入れた管理会社やシステム会社は、答える範囲を絞るか、担当者向けの下書きにとどめるか、人への出口を用意しています。原状回復の負担区分、契約上の判断、入居審査の可否、入居者情報の扱いは人が持ちます。今日できることは、今週届いた問い合わせのメモを1件、名前を伏せて記録の型に整えさせてみることです。その記録が、次のオーナー報告の材料になります。

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「自社の管理業務のどこからAIを使うか」を決め、記録の型づくりやツール選定、社内への定着まで伴走するのがclasslabの「AIコンサル」です。入居者対応や報告業務の見直しから相談いただけます。

よくある質問

賃貸管理でAIは何に使えますか?
入居者の問い合わせ・クレームの一次対応と記録、修繕の依頼文や点検記録の清書、退去精算の説明文、オーナーへの定期報告の下書き、更新・解約の案内文に使えます。AIが担うのは下書き・要約・分類で、原状回復の負担区分、契約上の判断、入居審査の可否は人が持ちます。
入居者からの問い合わせにAIが自動で回答しても大丈夫ですか?
答えが決まっている質問に範囲を絞れば使えます。AI機能を提供するシステム会社や導入した管理会社も、回答の範囲を管理会社が登録した「よくある質問」に限る(GMO ReTech、2026年5月発表・同年8月から提供予定としていた機能)、解決しない質問は会話の要約を付けて問い合わせフォームへ引き継ぐ(旭化成不動産レジデンス、2025年11月導入)といった設計にしています。設備故障や騒音など、現地確認や個別の事情が絡む問い合わせは担当者が対応します。
原状回復費用の負担区分をAIに判断させてもいいですか?
判断は人が行い、AIには決まった内容の説明文だけを書かせます。国土交通省のガイドラインは、経年変化や通常の損耗の修繕費用は賃料に含まれるとしています。一方、すでに結ばれた契約は契約内容に沿った取扱いが原則で、契約書の条文があいまいな場合や締結時に問題がある場合はガイドラインを参考に話し合うとされています。特約の有無や成立の経緯、立会いで確認した現況によっても結論が変わるため、個別の判断をAIに任せることはできません。
オーナーへの定期報告書をAIで作ってもいいですか?
日々の記録をもとに文章を下書きさせる使い方はできます。賃貸住宅管理業法の定期報告には、管理業務の実施状況と入居者からの苦情の発生・対応状況が含まれるため、対応の記録を同じ型でそろえておくと下書きがしやすくなります。記録にない事実をAIが補っていないかを照合し、オーナーが内容を理解したかは担当者が確かめます。
入居者の氏名や部屋番号をAIに入力してもいいですか?
会社のルールで認められていない限り入力せず、状況だけを伝えます。個人情報保護委員会は、個人情報を含むプロンプトを入力する場合は利用目的の範囲内かを十分に確認するよう求めています(2023年6月)。会社向けのChatGPT Business(旧ChatGPT Team)はビジネスデータを既定で学習から除外すると説明されていますが、入力してよい情報の範囲は社内で決めておきます。
編集者
ナカソネ

ナカソネホリエモンAI学校 不動産校 講師

AI活用スペシャリストのナカソネです。ビジネスパーソン向けに「現場で使えるAI活用」をサポートしながら、少しでもAIに興味を持ってもらえるよう情報を発信しています!