IT重説とは?対面重説との違い・実施要件・制度の経緯を不動産会社向けに解説

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IT重説とは?対面重説との違い・実施要件・制度の経緯を不動産会社向けに解説
本記事の情報は2026年6月時点のものです。IT重説・宅地建物取引業法に関する制度や運用は更新されることがあります。実施の際は国土交通省の最新情報を必ずご確認ください。

「IT重説」の意味は、あいまいなまま使われがち

「IT重説に対応しないと遠方のお客様を逃す」「電子契約とIT重説は何が違うのか」——不動産取引のオンライン化が進むなかで、IT重説という言葉だけが先行し、制度の中身が整理されないまま使われている場面が増えています。IT重説は宅地建物取引業法(宅建業法)に根ざした正式な仕組みで、要件を満たせば対面の重要事項説明と同じ効力を持ちます。

この記事でわかること

  • IT重説の正確な定義と、対面の重要事項説明との違い
  • IT重説が成立するための3つの実施要件
  • 「書面の電子化」「電子契約」など混同しやすい言葉との違い

IT重説とは何か

正式名称は「ITを活用した重要事項説明」

IT重説(アイティーじゅうせつ)とは、正式には「ITを活用した重要事項説明」といい、宅建業法第35条で定められた重要事項説明を、テレビ会議システムなどのITを使って対面以外(オンライン)で行う仕組みです。国土交通省の実施マニュアルでは、パソコン・タブレット等の画面を利用して、対面と同様に説明を受け、質疑応答を行うことが必要とされています。一定の要件のもとで実施されたIT重説は、宅建業法上、対面による重要事項説明と同様に取り扱われます。

重要事項説明そのものは、宅地建物取引士(宅建士)だけが行える独占業務です。賃貸・売買のいずれも契約が成立するまでに、書面(または電磁的方法)を交付して宅建士が説明しなければならないと定められています(宅建業法第35条)。IT重説は、この「説明」をオンラインで行う手段にあたります。

説明するのはあくまで宅建士

IT重説でも、説明の主体は宅建士本人です。画面越しであっても宅地建物取引士証を提示し、記名した重要事項説明書をもとに説明する点は対面と変わりません。AIや録画システムはあくまで補助であり、説明責任は宅建士が負います。この点はAIスマート重説の仕組みを検討するうえでも前提になる考え方です。

対面重説とどう違うのか

「場所」と「準備」が変わる

対面重説とIT重説の最大の違いは、宅建士と顧客が同じ場所に集まる必要がないことです。顧客は自宅や勤務先から説明を受けられるため、遠隔地の取引や来店が難しい顧客への対応がしやすくなります。国土交通省は、IT重説によって顧客の移動や費用の負担が軽減され、重要事項説明の日程調整の幅が広がる効果が期待されるとしています。

項目 対面重説 IT重説
実施場所 宅建士と顧客が同一空間 遠隔(テレビ会議等)
顧客の来店 必要 不要(自宅・職場で可)
必要な環境 説明スペース 双方向の映像・音声環境
宅建士証の提示 対面で提示 画面越しに提示し視認を確認
重要事項説明書 当日交付も可 事前に手元へ届けておく

なお、定量的な時間短縮率などの公的なデータは公表されていません。効果は会社の取引形態によって異なるため、自社の契約件数や顧客の所在を踏まえて判断するのが現実的です。

IT重説が成立する3つの実施要件

国土交通省の実施マニュアルと「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」では、IT重説を対面と同様に扱うための要件が示されています。要点は次の3つです。

要件1:双方向でやりとりできる映像・音声環境

説明の相手方が、内容を十分に理解できる程度に映像を視認でき、音声を聞き取れ、かつ双方向でやりとりできる環境で実施する必要があります。説明の途中で映像が見えない・音声が聞き取れない状態になった場合は、宅建士はいったん説明を中断し、状況が解消してから再開します。

要件2:宅地建物取引士証を画面で提示し、視認を確認する

宅建士は自身の宅建士証を画面に提示し、相手方がその記載を視認できたことを確認します。名義貸しやなりすましを防ぐための要件で、相手方に氏名を読み上げてもらうなど、視認できたことを双方向で確かめる手続きが求められます。「ただ映すだけ」では足りない点に注意が必要です。

要件3:重要事項説明書を事前に交付・送付しておく

宅建士が記名した重要事項説明書および添付書類を、説明に先立って相手方の手元に届けておく必要があります。相手方が事前に内容を読めるよう、交付から一定の期間を置いて実施することが望ましいとされています。具体的な準備や当日の手順は、IT重説対応物件の準備・実施手順で詳しく解説しています。

なお、本格運用後はIT重説を行うための事業者登録などは不要で、すべての宅建業者・宅建士が実施できます。

混同しやすい言葉との違い

IT重説の周辺には似た言葉が多く、混乱のもとになっています。整理しておきましょう。

用語 IT重説との違い
重要事項説明書(35条書面) 契約成立前に宅建士が交付・説明する書面そのもの。IT重説はこの「説明」をオンライン化する手段で、書面の事前交付が前提
契約締結時書面(37条書面) 契約成立後に交付する契約内容の書面。重要事項説明(35条)とは目的も交付のタイミングも異なる
書面の電子化 35条書面・37条書面などを紙ではなく電子データで交付すること。IT重説(説明の手段)とは別の制度で、相手方の事前承諾が必要。両者は併用も単独利用も可能
電子契約・オンライン内見 契約段階の電子化や、物件をビデオ通話で見る営業行為。いずれも法定の重要事項説明そのものとは別の取り組み

物件情報をオンラインで分かりやすく届ける工夫は、物件説明文をAIで作成する方法重要事項説明書の作成・確認でAIを使う方法も合わせて検討すると、非対面の取引全体を効率化できます。

制度の経緯と押さえておきたい日付

IT重説は、対面が原則だった重要事項説明を非対面で行えるようにする規制の見直しから生まれました。社会実験を経て、賃貸・売買の順に本格運用へ移行しています。「説明のオンライン化(IT重説)」と「書面そのものの電子化」は別のタイミングで解禁された点が重要です。

できごと 時期 内容
賃貸取引のIT重説 本格運用開始 2017年(平成29年)10月1日 賃貸借契約の重要事項説明をオンラインで実施可能に
売買取引のIT重説 本格運用開始 2021年(令和3年)3月30日 売買取引にもIT重説を本格的に導入
重要事項説明書等の電子化 施行 2022年(令和4年)5月18日 35条書面・37条書面等を電子データで交付可能に(相手方の承諾が前提)

これらの日付は、国土交通省の実施マニュアルおよび各報道発表で確認できます。

まとめ:IT重説は「非対面化を段階的に設計する」ための起点

IT重説は、宅建士が行う重要事項説明をオンラインで完結させる正式な仕組みで、双方向環境・宅建士証の提示・書面の事前交付という3つの要件を満たすことが前提です。そして「説明のオンライン化(IT重説)」と「書面の電子化」は別の制度なので、IT重説を導入しても重要事項説明書は紙で郵送する、という運用も成り立ちます。まずは自社の取引形態に合わせて、どこまで非対面・ペーパーレスにするかを段階的に設計することが、無理のない出発点になります。次は対応物件の具体的な準備手順を確認し、自社で回せる体制づくりに進みましょう。

出典(2026年6月時点):国土交通省

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よくある質問

IT重説は対面の重要事項説明と同じ効力がありますか?
国土交通省が示す実施要件(双方向の映像・音声環境、宅建士証の画面提示と視認確認、重要事項説明書の事前交付など)を満たして実施されたIT重説は、宅建業法上、対面による重要事項説明と同様に取り扱われます。
賃貸と売買でIT重説の扱いは違いますか?
制度としての本格運用の開始時期が異なります。賃貸取引は2017年10月1日、売買取引は2021年3月30日から本格運用が始まりました。実施要件の考え方は共通ですが、売買では犯罪収益移転防止法に基づく本人確認など、取引特有の留意点があります。
IT重説をすると書類も全部電子で完結しますか?
必ずしもそうではありません。「説明のオンライン化(IT重説)」と「書面の電子化」は別の制度です。IT重説で説明しつつ、重要事項説明書は紙で事前郵送する運用も可能です。書面を電子化する場合は相手方の事前承諾が必要です。
IT重説を始めるのに登録や申請は必要ですか?
本格運用後は、IT重説を行うための事前の事業者登録は不要で、すべての宅建業者・宅建士が実施できます。ただし、双方向環境や書面の事前交付など、実施要件を満たす運用体制の準備は必要です。
編集者
ナカソネ

ナカソネホリエモンAI学校 不動産校 講師

AI活用スペシャリストのナカソネです。ビジネスパーソン向けに「現場で使えるAI活用」をサポートしながら、少しでもAIに興味を持ってもらえるよう情報を発信しています!