AIソリューション > 不動産業界AI活用コラム > AI営業・集客 > 不動産営業のAIの始め方|最初の2週間で任せる3業務と入力してはいけない情報
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不動産営業でAIを始めるなら、最初の2週間は「3つの文章業務」だけに絞る
不動産営業でAIを始める手順は、①会社のルールと使ってよいアカウントを確かめる、②お客様の名前を伏せて、追客メール・営業日報・物件紹介文の下書きの3業務だけに使う、③1件あたりの時間を記録して2週間で比べる、の3段階です。
最初の対象を「毎日書いている文章」に絞るのには理由があります。総務省『令和8年版 情報通信白書』(2026年)の企業調査では、生成AIの業務別の利用で最も多いのが「議事録・メール作成補助」で、約7割にのぼります。しかも、メールや日報、紹介文の下書きは、社外に出る前に必ず人が読みます。AIが間違えても、送る前に止められる場所です。派手な自動化から入るより、失敗しても困らない業務で手に慣らすほうが、続けやすくなります。
この記事は、営業担当者本人や数名の営業チームのリーダーが、会社の本格的な導入を待たずに明日から使い始めるための手順書です。AIと営業の役割分担の考え方は不動産営業のAI活用術、会社として導入を広げる進め方はAI導入で失敗しない方法で扱っています。
この記事でわかること
- AIを使い始める前に確認する3つのこと(会社のルール・アカウント・入力しない情報)
- ツールの選び方と、料金・入力内容の学習の扱いの目安
- 最初の1週間に任せる3つの営業業務と、そのまま使えるプロンプト例
- 2週目の効果の測り方と、営業でAIを使うときの注意点
2週間でやることの全体像
最初の2週間は、次の3つの時期に分けて進めます。終わったときの状態を先に決めておくと、途中で迷いにくくなります。
| 時期 | やること | 終わったときの状態 |
|---|---|---|
| 初日 | 会社のルール・使うアカウント・入力しない情報を確認し、ツールを1つ決める | 迷わずAIを開ける |
| 1週目 | 追客メール・営業日報・物件紹介文の下書きにAIを使い、1件ごとに時間を記録する | 業務ごとに5件ほどの記録がある |
| 2週目 | 記録を比べ、うまくいった指示を保存して上長やチームに共有する | 続ける業務と次に試す業務が決まっている |
大事なのは、2週目の終わりに「便利だった」ではなく「1件あたり何分変わったか」を言える状態にすることです。数字があれば、有料プランや会社契約を検討するときの材料になり、同僚に勧めるときの説得力も変わります。
始める前に確認する3つのこと
AIを開く前に、ルール・アカウント・入力しない情報の3つを確認します。どれも10分ほどで済みますが、ここを飛ばすと、あとで「その使い方はまずかった」と止められることになりかねません。
会社にAIの利用ルールはある?
まず、会社にAIの利用ルールがあるかを確認します。ルールが無い場合は、上長に次の3点だけ聞いておけば始められます。
- 業務で使ってよいツールとアカウント。
- お客様の情報を入力してよいか、よいならどの範囲か。
- AIが作った文章を社外に出す前に、誰が確認するか。
帝国データバンクの調査(2026年3月)では、生成AIを活用するうえでの懸念として「トラブル時の責任所在などのルール整備」を挙げた企業が25.5%ありました。ルールがまだ整っていない会社は珍しくありません。だからこそ、個人で始める人が最初に上長と3点を決めておくと、そのまま会社のルールを作るときの下書きになります。ルールの作り方はAI利用ガイドラインの作り方で解説しています。
どのアカウントで使う?有料なら安全、ではない
次に、どのアカウントで使うかを決めます。ここで誤解しやすいのが、「有料プランにすれば入力内容が学習に使われない」という思い込みです。
入力内容の扱いを分けるのは、料金ではなく「会社契約のアカウントか、個人のアカウントか」と、その設定です。
ChatGPTは、無料版やPlusなど個人向けのプランでは、入力内容をモデルの改善に使う設定が既定でオンになっていて、設定で無効にできます。BusinessやEnterpriseといった会社向けのプランは、既定で学習に使われません(OpenAI、2026年)。Claudeの個人向けプランは、2025年の規約更新で、学習に使うかどうかを本人が選ぶ方式に変わりました(Anthropic、2025年)。
「このAIは学習しない」とサービス名で覚えると、規約が変わったときに古くなります。使い始める日に、自分のアカウントの設定画面を一度開いて確かめるのが確実です。
入力してはいけない情報は?
会社のルールで認められていない限り、次の情報はAIに入力しません。
- お客様の氏名・電話番号・メールアドレス・住所
- ほかの情報と組み合わせると個人を特定できる詳細(勤務先名・年収額・子どもの学校名・ローン審査の結果など)
- 契約前の売主・買主の条件や、公開前の物件情報
- 顧客管理システムから書き出した顧客リスト
一方で、「30代・夫婦」「3LDK希望」程度のぼかした属性や状況は、個人を特定しない情報として伝えてかまいません。
個人情報保護委員会は2023年6月の注意喚起で、事業者が個人データを含むプロンプトを本人の同意なく入力し、それが応答以外の目的で扱われると法令違反になる可能性があるとして、提供事業者がそのデータを機械学習に使わないことなどを十分に確認するよう求めています。個人情報保護法の改正はすでに成立・公布されていますが施行はこれからなので、顧客情報を入力してよいかは現行のルールで判断します(改正の中身は改正個人情報保護法の解説で整理しています)。詳しくはAIにお客様の個人情報を入れてよいかの解説をご覧ください。
名前を伏せても、文面の質はほとんど落ちません。AIに必要なのは「誰か」ではなく「どんな状況か」だからです。「30代のご夫婦、3LDKを内見済み、ご返事待ち」と状況を言葉にする作業は、そのままAIへの指示が上手になる練習にもなります。
ツールはどう選ぶ?迷ったら「いつもの業務画面」で決める
生成AIのツール選びで迷ったら、性能の細かな差より、毎日開く画面にあるかどうかで決めます。
- Microsoft 365(Outlook・Excel・Teams)が中心の会社……Copilot Chat
- Google Workspace(Gmail・スプレッドシート)が中心の会社……Gemini
- どちらでもない会社……ChatGPT か Claude
Microsoft 365を契約している会社では、対象のアカウントを持つユーザーはCopilot Chatを追加費用なしで使えます(Microsoft、2026年)。新しいツールを契約する前に、すでに社内にAIが入っていないかを確かめる価値があります。
料金と入力内容の扱いはどう違う?
主要な生成AIについて、個人向け有料プランの料金の目安と、入力内容が学習に使われるかの扱いを並べると、次のようになります(2026年9月時点。税の扱いや課金方式は各社で異なります)。
| サービス | 無料版 | 個人向け有料プランの例 | 入力内容の学習の扱い |
|---|---|---|---|
| ChatGPT | あり | Plus 月20ドル(日本の料金ページでは3,000円・2026年8月時点) | 個人向けは既定でオン・設定で無効にできる。Business・Enterpriseは既定で使われない |
| Claude | あり | Pro 月20ドル | 個人向けは学習に使うかを本人が設定で選ぶ。Team・Enterpriseは既定で使われない |
| Gemini | あり | Google AI Pro 月2,900円 | 個人向けは「アクティビティの保存」がオンだと改善に使われる。Google Workspaceは許可なく学習に使われない |
| Microsoft Copilot | あり | —(会社のMicrosoft 365契約で使うのが一般的) | 職場・学校のアカウントでは基礎モデルの学習に使われない |
Geminiの個人向けアカウントでは、会話が人のレビュー担当者に確認される場合があるため、Googleは機密情報を入力しないよう注意を促しています。表はあくまで始めるときの目安です。ChatGPTの無料版と有料版の切り替えの判断はChatGPT無料版と有料版の違い、4つのサービスの業務別の使い分けは生成AIを業務別に使い分ける選び方で詳しく解説しています。

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最初の1週間に任せる3つの営業業務
最初の1週間は、次の3つの業務だけにAIを使います。いずれも「社外に出る前に必ず人が読む文章」です。帝国データバンクの調査(2026年3月)でも、生成AIを活用している企業の主な活用業務で最も多かったのは「文章の作成・要約・校正」でした。
① 追客メール・お礼メールの下書き
内見後のお礼や、返事が止まっているお客様への連絡文を下書きさせます。渡すのは状況だけで、名前や連絡先は入れません。
あなたは不動産会社の賃貸営業担当です。次の状況のお客様に送る、内見のお礼メールの下書きを作ってください。 【状況】 ・30代のご夫婦。3LDKを探している。 ・昨日、駅徒歩10分の物件を内見した。 ・日当たりは気に入っていたが、収納の少なさを気にしていた。 ・まだ申し込みの返事はもらっていない。 【条件】 ・丁寧だが、堅すぎない文面にする。 ・収納の懸念について、確認できていないことを約束しない。 ・次の連絡の日時を提案する一文を入れる。 ・お客様の名前は「〇〇様」と書く。
AIが返した下書きは、物件名・日時・金額を送信前に必ず元の情報と照合します。業務ごとの書き方の型を増やしたいときは、業務別のプロンプト集が使えます。
② 商談メモから営業日報をまとめる
商談や内見の直後に書いた箇条書きのメモや、スマホの音声入力で残したメモを、日報の型に清書させます。
次のメモを、営業日報の形式にまとめてください。 【形式】 ・対応の概要(2行以内) ・お客様の要望と懸念 ・自社の対応と提案した内容 ・次のアクションと期限 【メモ】 (ここに箇条書きのメモを貼る。お客様の氏名や連絡先は書かない) 【注意】 ・メモに書かれていないことは補わず、「不明」と書いてください。
確認するのは、日報に書かれた「お客様の発言」が元のメモと一致しているかです。AIは文章を自然につなげようとして、メモに無い内容を足すことがあります。「メモにないことは不明と書く」と指示しておくと、この癖を抑えられます。音声でメモを残す方法は音声入力の記事、商談の録音から議事録を作る手順はAI議事録の作り方で解説しています。
③ 物件紹介文の下書き
物件の基本情報を渡して、ポータルサイトや自社サイトに載せる紹介文の下書きを作らせます。
次の物件情報だけを使って、ファミリー向けの物件紹介文を300字程度で作ってください。 【物件情報】 ・所在地:【東京都世田谷区】 ・中古マンション、築10年、3LDK、70㎡ ・南向きバルコニー、駅徒歩5分 【条件】 ・上に書いた数値や設備以外のことは書かないでください。 ・「最高」「完全」「日本一」「格安」など、根拠の説明が必要な強調表現は使わないでください。
AIは不動産の広告ルールを前提に文章を書くわけではないので、何も指示しないと「最高の立地」のような表現を自然に混ぜます。不動産の表示に関する公正競争規約では、「完全」「日本一」などの特定用語は、表示内容を裏付ける合理的な根拠を示す資料がなければ使えません。最上級を表す「最高」や、価格の安さを表す「格安」などの用語は、根拠資料に加えて、根拠となる事実を併記することも求められます(不動産公正取引協議会連合会、首都圏不動産公正取引協議会)。宅地建物取引業法も、事実と著しく異なる表示や、実際より著しく優良・有利だと誤認させる広告を禁じています。
禁止語の1行を足せば事故の入口は1つ減りますが、それで確認が要らなくなるわけではありません。AIが書いた文章かどうかにかかわらず、掲載するのは会社です。紹介文の詳しい作り方は物件説明文をAIで書く手順にまとめています。
重要事項説明書や契約書面に最初から使わないのはなぜ?
最初の2週間は、重要事項説明書や契約書面の作成・要約にはAIを使いません。重要事項の説明と書面への記名は宅地建物取引士が行う業務で、AIの誤りに気づくには専門知識が要るからです。まず失敗しても送る前に止められる文章で慣れ、書類への活用は別のテーマとして検討するほうが安全です。重要事項説明でのAIの使い方は重要事項説明書の作成・確認でAIを使う方法で扱っています。
2週目は何をする?効果の測り方と続け方
2週目は、1週目に付けた記録を比べ、続ける業務と次に試す業務を決めます。
効果はどう測る?1件あたりの時間を記録する
記録する項目は4つだけです。表の右の列は書き方の例で、効果を示す数値ではありません。
| 項目 | 記録する内容 | 記入例 |
|---|---|---|
| 業務名 | どの業務にAIを使ったか | 内見のお礼メール |
| 使う前の時間 | AIを使わずに書いたときの1件あたりの分数 | 自分の実測値 |
| 使った後の時間 | 指示を書いてから、確認・修正が終わるまでの分数 | 自分の実測値 |
| 直した箇所 | AIの下書きで人が直した内容 | 日時の誤り、敬語の言い回し |
業務ごとに5件ほど記録すると、平均が見えてきます。時間が縮まらない業務があっても失敗ではなく、「この業務はAIに向かない」という判断材料です。「直した箇所」に同じ誤りが続くなら、プロンプトに1行足せば直るかどうかも見えてきます。他社の事例の数字ではなく自社の数字で判断できる点が、この記録の価値です。時間を金額に換算して費用対効果を出す方法はAI導入の費用対効果の測り方で解説しています。
うまくいった指示を保存して、チームに渡す
記録と一緒に、うまくいったプロンプトを保存しておきます。帝国データバンクの調査(2026年3月)では、生成AIを活用している企業の18.8%が、悪影響として「使いこなせる社員とそうでない社員の間で能力や成果の格差が拡大」を挙げています。
この格差は、個人が見つけたうまい使い方が、その人の中だけに留まることで広がります。個人でつかんだ使い方をチームに渡すところまでが、始め方の一部です。保存したプロンプトと記録表を共有すれば、次に始める同僚は初日から同じ型で試せます。現場に定着させる工夫は現場でAIが定着しない原因と処方箋にまとめています。
不動産営業でAIを使うときの注意点は?
使い始めてから気をつけることは、次の4つです。
- 誤りをそのまま送らない……AIの出力には不正確な内容が含まれることがある。日時・金額・物件名・面積は、送信や掲載の前に元の情報と照合する。
- お客様の情報を入れない……会社のルールで認められていない情報は入力せず、状況を言葉にして伝える。
- 広告表現は人が確認する……物件紹介文は、特定用語や誇大な表現がないかを掲載前に確認する。
- 最終判断は人がする……提案の内容や条件の説明は担当者が、重要事項の説明は宅地建物取引士が責任を持つ。
営業でAIを使うリスクというと情報漏えいが先に挙がりがちですが、日々の業務で起きやすいのは「間違いに気づかず送ること」のほうです。帝国データバンクの同じ調査でも、企業の懸念の1位は「情報の正確性」(50.4%)でした。確認の手間を省かないことが、AIを長く使い続ける条件になります。AIの誤りを見抜くコツは「AIの嘘」を見抜く最終チェックのコツで紹介しています。
まとめ
不動産営業でAIを始めるときは、最初から大きな自動化を狙わず、2週間の手順で進めます。初日に会社のルールと使うアカウント、入力しない情報を確認し、ツールは毎日開く画面にあるものを1つ選びます。1週目は追客メール・営業日報・物件紹介文の下書きの3業務だけに使い、1件ごとに時間と直した箇所を記録します。2週目に記録を比べ、うまくいった指示を保存してチームに渡せば、個人の試行が会社の使い方に変わっていきます。今日できることは、次に送る内見のお礼メールを1通、名前を伏せてAIに下書きさせることです。




