エアコンの購入でチェックするのが対応畳数です。設置を考えている部屋に合わせた対応畳数を選べば、家電の専門的な知識がなくても最適なエアコンを購入できるように思えますが、実はここには落とし穴が。
今回は、エアコン選びの基準となる対応畳数の考え方や選び方について、詳しく解説していきます。きちんと家に合ったエアコンを選んで、電気代を賢く節約しましょう。
エアコンの対応できる畳数とは
今や一家に一台、必須の存在となったのがエアコンです。地球温暖化に伴い、日本の夏は酷暑日が続くようになりました。エアコンのカタログや仕様表には、対応する畳数の記載があり、冷暖房それぞれ「8〜11畳対応」といった表記がされています。
間違いやすいのですが、これは「8〜11畳までの部屋に対応している」という意味ではなく、「木造住宅は8畳、鉄筋構造は11畳に対応している」という表記です。11畳の木造住宅で使用したい場合には、ややパワーが足りないという目安になっています。
エアコンの対応畳数を見るときの注意点
モデルによって異なるエアコンの対応畳数は、設置したい部屋の広さと、表記されている畳数を照らし合わせて選ぶのが購入時の指標です。まずは、エアコン選びにおいて対応畳数を見るときの注意点を解説していきましょう。
対応畳数は無断熱住宅に合わせた基準である
エアコンの対応畳数の基準は、1964年に制定されてから50年も経った現在まで見直されていません。つまり、仕様表などに表記された対応畳数は、現在の断熱性の高い住宅基準ではなく、無断熱時代の住宅基準のままなのです。
制定当時の日本の住宅は、気密性や断熱性に配慮されず建てられていました。現在の断熱性が高い住宅で、当時の基準を参考にすればオーバースペックとなってしまいます。
暖房と冷房の対応畳数が違う
エアコンの対応畳数では、冷房・暖房でそれぞれ畳数が異なります。注意しておきたいのが冷房時の対応畳数です。
特に、夏場の冷房の効きが悪いと感じて買い替えを検討している場合には、冷房の対応畳数と部屋の広さを合わせて購入するのがおすすめです。一方の暖房時は、目安の畳数のエアコンではパワーが強すぎることもあります。
オーバースペックは無駄なコストに繋がる
対応畳数でエアコンを選ぶと、住宅の構造によってはオーバースペックとなってしまい、余分なコストがかかります。夏場の冷房運転では部屋が冷え過ぎてしまい、運転のオン・オフをこまめに行わなければなりません。
オーバースペックの製品を購入すれば、初期費用が高額になる以外にもランニングコスト面で損をします。ここで解説した予備知識をしっかり持って購入しましょう。
畳数でエアコンを選ぶ時のポイント
エアコン選びの指針となる対応畳数は、制定当時から変わっていないことが分かりました。指標が頼れないとなると、製品選びで困ってしまいますよね。
続いては、畳数でエアコンを選ぶときのポイントを解説していきます。対応畳数の表記以外にも、次に解説するポイントを抑えてから探せば、より設置場所に合うモデルを見つけられますよ。
必要暖房能力の計算を参考にする
まずは、エアコンの必要暖房能力の計算を参考にするという方法です。エアコンの暖房能力は、高断熱高気密住宅におけるスペシャリスト、建築家の松尾和也氏によって概算計算式が考案されています。
冷房の能力は家の日射条件が大きく関わってくるため、計算式での想定が難しいですが、暖房能力であれば概算を算出できます。日射がない時間帯でも、室内を24度に保つ暖房能力の計算式は下記のとおりです。
必要暖房能力(W)=面積×Q値×(24℃−冬の外気最低温度)
この「Q値」には、家の断熱性能を表す「UA値」が当てはまります。
無断熱住宅 | 3.66 |
長期優良住宅 | 0.87 |
HEAT20 G2グレード | 0.46 |
購入前に、この計算式に当てはめて必要な暖房能力を求めてみましょう。
エアコンは稼働時に最もエネルギーを消費して、室内が設定した温度に近づくと温度維持のためにエネルギーを落としていきます。安全な最大出力である定格能力よりも、若干余裕を持たせるのが効率の良いエアコンの運転です。
部屋の間取り・構造・断熱能力を考慮して考える
エアコン選びでは、対応畳数に加えて、部屋の間取りや構造、断熱能力に注意する必要があります。西日の強い部屋や最上階の部屋では、太陽光の影響を受けて熱がこもりやすいので、強い冷房能力が必要です。他にも、天井断熱や外壁の色なども要因として関わってきます。
そこで活用したいのが、エアコン選定支援ツール「ASST」です。居住地域の気候、部屋の広さ、ユーザーの好みに応じて、適したエアコンを選んでくれます。
温まる・冷えるまでの時間を考える
エアコンのオーバースペックは、余計な出費に繋がります。しかし、設置した部屋の広さに対して対応畳数の小さいエアコンを選ぶと、部屋全体が温まる、もしくは冷えるまでに時間がかかります。
特に冬の朝などは、部屋が温まらないことにはなかなか布団から抜け出せず辛いですよね。温度調節までにかかる時間も考えて、対応畳数を選びましょう。
畳数以外のエアコンを選ぶ基準
エアコン選びでは、表記されている対応畳数を鵜呑みにするのではなく、部屋の構造や断熱性を考慮して選ぶのが重要であると分かりました。
さらに、納得のいくエアコン選びができるよう、畳数以外の基準となるポイントを5つ挙げていくので、ぜひ参考にしてみてくださいね。
省エネ達成率
洗濯機やエアコンなどの大型家電には、省エネ達成率が表記されています。ラベルには星印での5段階評価が示されており、この評価が高いほど省エネ性能が高く、ランニングコストを安く抑えられる製品です。
エアコンは、夏場と冬場の電気料金を大きく占める家電です。キッチンやリビングなど、使用頻度の高い部屋にエアコンを設置する場合には、省エネ達成率にも注目してみましょう。
低温暖房能力
冬の寒さに弱い人や冷え性の人は、部屋全体を温めてくれる暖房能力は重要です。そこで注目したいのが、エアコンの低温暖房能力です。
これは外気温が2度の状態での暖房能力のことで、対応畳数が同じ製品でも低温暖房能力には違いが生じます。低温暖房能力が優れているほど、外気温が冷たくてもパワフルな暖房運転が可能です。
APF
初めて聞く方も多いと思いますが、エアコン選びでは「APF(Annual Performance Factor)」という能力数についても知っておきましょう。
APFとは、冷房と暖房を併せて通年で換算した、エネルギー消費効率の数値です。APFの数値が大きいほど、効率が良く高性能の製品ということが分かります。車に例えるならば、低燃費で長距離を走れるということですね。
同じくエネルギー消費効率として記載されるのが「COP(Coefficient of Performance)」です。APFとの違いは、一定条件下での冷暖房効率を示している点です。
2010年まではCOPが表記されていましたが、2010年以降から通年の消費効率を示すAPFが表記されています。 実際に家庭で稼働させるとなると数値通りにはいきませんが、省エネ基準達成率と併せて、エネルギー消費効率の項目もチェックしておきましょう。
寒い地域は寒冷地用を
冬の最低気温がマイナス10度にも至る寒さが厳しい地域では、パワフルな暖房運転に特化した寒冷地用エアコンの購入をおすすめします。寒冷地用ではないエアコンは、室外機への積雪・凍結対策が講じられておらず、積雪が高い地域には適していません。
また、外気温が4度以下になると、室外機に霜が付く「デフロスト」が起こります。デフロスト中は、室内機から温風が出てこなくなり、せっかく温まった室温が下がってしまいます。再び室温を上げるために、エネルギー消費も必要になってしまうのです。
寒冷地向けのエアコンは、霜取り中にも室内機が暖房運転を行えるよう工夫され、温まった室内を冷やしません。
メーカー独自の付加機能
近年のエアコンに搭載されている機能は、毎日のお手入れに便利な除菌・自動クリーニング機能をはじめ、AIによる人感センサーや専用アプリと連携したスマートモデルなどさまざまです。
機能面でおすすめしたいのは、除菌や脱臭効果が高いエアコンです。ほこりやカビだけではなく、細菌や花粉、PM2.5などの空気清浄効果があり、タバコやペットのニオイを軽減させることもできます。
加湿機能を搭載したエアコンでは、外気から水分を取り込んで湿度を調整してくれるので、エアコン運転時に加湿器を導入しなくても、室内を適湿に保ちます。
特に、暖房運転時には、乾燥による喉の痛みや肌のかさつき、目の渇きなどに悩まされますが、加湿機能付きのエアコンを購入すれば快適に使えます。
おすすめのエアコンメーカー
エアコン選びでは畳数だけではなく、表記されている数値などにも注目すれば、家の広さや地域に合った最適なモデルを選ぶことができます。
最後に、実際に購入時に検討をおすすめしたい、大手メーカーの人気シリーズを紹介します。ここでは、ダイキン・シャープ・三菱電機・日立・パナソニックの5社から、それぞれの主力製品をピックアップしました。気になる製品はぜひチェックしてみてくださいね。
ダイキン
ダイキンのエアコンでは、加湿・換気ができる「うるさらシリーズ」が人気です。加湿機能では、室外機から外気の水分を集めるので、給水が要らない便利さが魅力です。冷暖房運転を行いながら、窓を開けずに換気が行えるのも人気が高い機能です。
うるさらX Rシリーズ
「うるさらX Rシリーズ」は、加湿・除湿運転に加えて、換気機能を搭載しています。冷暖房運転をしながら外気を取り込み、室内へ新鮮な空気を運びます。
給水が不要な「無給水加湿(うるる加湿)」も、冷暖房運転をしながら加湿できるので、エアコン運転時の乾燥が苦手な人には嬉しい機能です。
ルームエアコン Aシリーズ
「ルームエアコン Aシリーズ」は、AIのセンシングで室内の床や壁の温度が検知する、「AI快適自動運転」機能が特長です。記憶した過去の運転内容から、オートで運転調節を行います。
専用の「ダイキンスマートアプリ」と連携させれば、リモート操作や運転状況・電気代の確認が可能です。複数台のダイキンエアコンを一括操作することもできます。
リソラ SXシリーズ
「リソラ SXシリーズ」は、スリム設計でデザイン性にこだわったエアコンです。奥行きがある室内機は圧迫感がありますが、SXシリーズは奥行きが約18.5cmの薄型設計です。
本体はホワイト・ブラックのベースカラーを選び、ボディパネルのカラーや質感を好みにカスタマイズできます。公式サイトでシミュレーションできるので試してみてくださいね。
シャープ
シャープは、独自イオン「プラズマクラスター」を搭載した、空気清浄機能に特化したエアコンが人気です。フラグシップモデルには、最上級の「プラズマクラスターNEXT」が採用され、通常のプラズマクラスターの2倍以上の高濃度イオンを放出します。
Airest N-Pシリーズ
「空気清浄機と呼べる、唯一のエアコン」がキャッチフレーズのシリーズです。エアコン上部を集塵脱臭フィルターが隙間なく覆い、フィルターから空気を吸い込む空気清浄機に近い構造です。
集塵脱臭フィルターによって、カビの原因となる埃の侵入を99%防げるので、内部にカビが発生しにくいのも魅力です。普段の掃除は、上部フィルターの表面を掃除機などで吸うだけ。面倒なエアコン掃除が格段に楽になりますね。
Xシリーズ
プラズマクラスターNEXT搭載の「Xシリーズ」は、CO2センサーを搭載して適切な換気タイミングを知らせる「換気おしらせ」機能を搭載した製品です。
換気すると室温が大きく変化するので、エアコンがフルパワーで運転されます。しかしXシリーズでは換気中の電力消費を抑え、換気後にすばやく設定温度へと戻す「換気連動運転」も搭載しているので、気になる電気代も安心です。
専用アプリ「COCORO AIR」との連携や、スマートスピーカーと連携した音声操作にも対応しています。
三菱電機
三菱電機のエアコンは、霧ヶ峰シリーズに搭載された「ムーブアイmirA.I.」が特徴です。
AIが体感温度や湿度を予測して、室内の人に合わせた運転を自動で切り替えます。きちんと風が届いているか確認しながら調整するので、室内のどこにいても快適に過ごせます。
霧ヶ峰 FZシリーズ
「霧ヶ峰 FZシリーズ」は、APF数値で4年連続トップを誇る省エネシリーズです。高精度な赤外線センサー「ムーブアイmirA.I.+」を搭載して、個々の体感温度を把握します。2つのファンが左右独立で動くので、暑がり・寒がりな人それぞれに適した風量で送風します。
部屋の構造も把握して、奥行きが浅い場所は弱い風、遠距離には強い風を送って、効率の良い賢い運転が可能です。
霧ヶ峰 Zシリーズ
「霧ヶ峰 Zシリーズ」は、霧ヶ峰シリーズのプレミアムモデルです。便利な自動掃除機能が充実していて、運転停止後に、自動で汚れを集める「フィルターおそうじメカ」が便利です。フィルターは、ウイルスを抑制する特殊加工が施され、室内機の内部にも特許技術の特殊加工を施した「よごれんボディ」が採用されています。
霧ヶ峰 FLシリーズ
「霧ヶ峰 FLシリーズ」は、2016年度のグッドデザイン賞を受賞した、デザイン性に秀でたプレミアムモデルです。光沢パネルには高級感があり、こだわりのインテリアから浮きにくいスタイリッシュさが魅力です。
カラーはパウダースノウ、オニキスブラック、ボルドーレッドの3色展開で、いずれも上質な雰囲気が漂います。省エネ基準達成率104%の高性能で、自動掃除機能も充実しています。
日立
日立のエアコンは、凍結洗浄機能が搭載された「白くまくんシリーズ」が人気です。内部の熱交換器を凍らせて霜を付け、その霜を一気に溶かして汚れを落とす掃除機能です。
掃除しにくいエアコン内部を常に清潔に保てるので、運転効率が落ちません。なお、凍結洗浄は全シリーズの室内・室外機に採用されています。
白くまくん Xシリーズ
「Xシリーズ」は、凍結洗浄機能はもちろん、放出したイオン電子が空気中の埃やニオイを捕らえる「プラズマイオン空清」が搭載されています。
リモコンの「凍結洗浄」を押すだけで、フィルター、ファン、熱交換器、排水トレーまで一括クリーニングが可能です。「カビバスター」機能では、エアコン内部のカビの抑制運転を行います。
白くまくん Wシリーズ
2020年度のグッドデザイン賞を受賞した「 Wシリーズ」は、本体高さが25センチを切るコンパクトさが人気です。設置スペースが足りずに困っている家庭でも、カーテンレールの上などに設置できる可能性が広がります。エアコンを清潔に保つ凍結洗浄機能で、クリーニングコストを抑えられる効果もあります。
パナソニック
パナソニックでは「ナノイーX」を搭載した空気清浄効果の高い「エオリアシリーズ」が人気です。空気中の菌をナノイーが包み、有害物質を抑制します。スギ花粉を使った品質テストでは、約3時間で99%の抑制に成功している、花粉への効果も高いエアコンです。
エオリア EXシリーズ
「EXシリーズ」は、専用の「エオリア アプリ」に対応したスマートモデルです。アプリはウィジェット画面にして一目で運転状況が見えるよう設定できます。
自宅に近づくとGPS機能で運転がオンになるので、帰宅した室内がいつでも快適な室温に保たれます。アプリからは最大電流を3段階で調節できるので、電気料金の目安を見ながら節電運転に設定することも可能です。
エオリア LXシリーズ
フラグシップモデルの「LXシリーズ」は、エアコン内部の温度・湿度が一定を超えると、オート運転が始まる「プラズマクラスターパトロール」が搭載されています。
また、夏場の除湿運転が苦手な方におすすめしたいのが、「氷結ドライ」機能です。室内が冷えすぎるとファンの回転数が下がる氷結ドライ除湿に自動で切り替え、過ごしやすい室温に保ってくれます。
エオリア UXシリーズ
「UXシリーズ」は、マイナス25度までの品質テストにクリアした、パワフルな暖房運転がUXシリーズの室外機には、内部温度を保つ「ENECHARGE」が搭載され、霜取り運転が不要な室外機として設計されています。
外気温が氷点下でも、暖房を付ければすぐに温風が室内を温めてくれますよ。室内にいる人の位置や動きを検知する人感センサーも搭載された賢いモデルです。
コストも効率よく適した対応畳数のエアコンを検討しよう
この記事では、エアコン選びのポイントとなる対応畳数の考え方や、実際の住まいに合ったスペックのエアコンを選ぶポイントについて解説してきました。
- 対応畳数は無断熱時代の基準のまま
- 部屋の間取り・構造・断熱能力からエアコンを選ぼう
- 寒冷地では低温暖房能力の高い、寒冷地用がおすすめ
- 省エネ達成率やAPF数値の高さにも注目
エアコンの対応畳数の基準は、1964年の制定以降、現在まで見直されていない状態です。現在の断熱性の高い住宅には、無断熱住宅の基準が合わないので、対応畳数だけでエアコンを選ぶとオーバースペックとなってしまいます。
電気代の節約や環境への配慮を考えて、設置場所に合った効率良く稼働できるエアコンを選ぶことが大切です。