電気ストーブは、適切に使用されていれば便利で安全な暖房器具として広く利用されています。火を使わずに電気で加熱するので、火災のリスクが低い暖房器具だと思われがちですが、火災の原因や安全上の注意点を知った上で、注意して使わなければなりません。
この記事では、電気ストーブの火災リスクについて解説し、安全な使用方法や注意すべきポイントについて詳しく紹介します。安心して電気ストーブを利用するために役立つ情報を解説していきます。
電気ストーブでも火事になる!
電気ストーブは火を使わないし、安全な暖房器具だと思っていたんだけど、火事の原因になるの?
電気ストーブは便利で安全だと思われがちですが、実際には火災の危険性があることをご存じでしょうか。電気ストーブでも火災発生リスクが大いにあること、そしてその危険性を回避するための重要なポイントについて詳しく解説します。
電気ストーブの安全な使用方法や火災予防について知識を深めることで、安全で快適な暖房を実現するための有益な情報をお届けします。
火災・死者ともに多い電気ストーブの火事
東京消防庁の調べによると、令和3年における火災件数は3,935件です。そのうち、電気火災は全体の35.6%を占める1,399件で、電気ストーブ関連の火災はこのうち85件と、全体の6.1%に及んでいます。電気ストーブが原因の火災では6人の死者と34人の負傷者が出ています。
令和3年における火災件数 | 3,935件 |
電気火災 | 1,399件 |
電気ストーブ関連の火災 | 85件(死者6人、負傷者34人) |
最近の電気ストーブ火災で亡くなった方々は、その7割が75歳以上の後期高齢者です。ほとんどが一人暮らしで、就寝中に火災が起きています。そのうち何名かは着衣の着火、もしくは軽度火災による一酸化炭素中毒で命を落としています。
人々の危険意識が低いことも原因に
東京消防庁の調査結果から分かるように、火災発生件数における最も多い火災原因は電気ストーブです。しかし東京消防庁が行なったストーブ火災における危険度と実態についてのアンケートによれば、最も火災リスクの高いストーブについて尋ねたところ、8割以上の人が「石油ストーブ」だと回答しています。
電気ストーブは火を使わないため安全と思われがちですが、安全と誤解していることによる気の緩みもあり、実際には火災リスクが高いです。さらに、電気ストーブを使用する際には、燃えやすい物をストーブから1m未満に置いている人の割合が60%以上で、石油ストーブの約30%を上回る回答結果でした。
後ほど詳しく後述しますが、電気ストーブの10cm以内に置かれたものが、ストーブに触れていなくても発火するという実験結果も実証されています。このような深刻な火災リスクを見誤っていることで、電気ストーブによる火災件数が増えているのかもしれません。
電気ストーブで火事が起こる原因
電気ストーブは便利で使いやすい暖房器具ですが、誤った使用や不注意な取り扱いによって火災の危険性が高まります。ここからは、電気ストーブが火災を引き起こす可能性のある主な原因について詳しく解説します。火災を予防し、安全な暖房環境を確保するための情報を知っておきましょう。
就寝中にふとんが接触して引火
電気ストーブによる火災の原因はさまざまですが、電気ストーブは熱を発するため、燃えやすい素材が近くにあると火災のリスクが高まります。
特に就寝中には、火元周辺の安全に注意しなければなりません。就寝中にふとんが電気ストーブと接触してしまい、それが引火すると大変危険です。火災予防のためには、電気ストーブの使用中は目を離さず、就寝前には電気ストーブの電源を切るなど、安全対策を講じましょう。
洗濯物を近くで干したことによる引火
熱を発する電気ストーブは、洗濯物を置いておくと渇きやすいので、近くに洗濯物を干している人もいるでしょう。しかし、その洗濯物がストーブの熱によって過熱され、引火する危険性は大いにあります。ストーブの温風で洗濯物が動いたり落下したりして、知らない間にストーブに触れて引火していることも考えられるのです。
電気ストーブを使用する際には、周囲に可燃物を置かないよう必ず安全な距離を確保しましょう。製品の取扱説明書をよく読んで、使用上の安全スペースを把握してきちんと守ることが大切です。
電気ストーブ付近のホコリに引火
電気ストーブによる火災原因のひとつに、電気ストーブ周辺に溜まったホコリやゴミへの引火が挙げられます。定期的な掃除を怠って、電気ストーブの本体やその周辺にホコリが溜まっていたり、ゴミが置かれたままになっていたりすると、火災の要因となることがあります。
特に電気ストーブの排熱口や周辺の隙間に溜まったホコリは、火災のリスクを高める原因です。使用する時期には周辺を必ずきれいに掃除して、引火を防ぎましょう。
コードの断線や劣化による発火
電気ストーブの火災原因として、コードの断線や劣化も挙げられます。使われているうちに電源コードが摩耗して絶縁が劣化すると、電気が漏れたりショートしたりする可能性が高まり、発火の要因となります。
他にも、不適切な配線や接続なども発火の原因です。電源コードやプラグなどは定期的に点検して、異常が見つかった場合は使用を中止するか、買い替えを検討しましょう。
電気ストーブで火事が発生するまでの時間
東京都の調査から、電気ストーブで実際に火事が発生するまでの時間を計測したデータがあります。電気ストーブの近くに置いた可燃物の危険性を調査するため、運転中の電気ストーブの前方面に綿の布団を置き、距離を変えてそれぞれの温度を測定したものです。
【可燃物と電気ストーブの距離別の着火するまでの時間】
電気ストーブと可燃物の距離 | 発煙 | 表面温度 |
---|---|---|
5cm | あり | 500℃以上 |
10cm | なし | 200℃ |
30cm | なし | 100℃以上 |
この調査結果から見ると、電気ストーブから5cm離した状態では、表面温度は500℃以上に達して発煙しています。また、10cm離した場合には発煙はしなかったものの、表面温度は約200℃に達しており大変危険です。
30cm離している場合でも100℃以上まで温度が上昇するなど、距離が近いと火災や火傷の危険が高まることが報告されています。
電気ストーブによる火事を防ぐポイント
電気ストーブは便利で簡単に使える暖房器具ですが、適切な注意を怠ると火災の危険性が高まります。ここからは、電気ストーブによる火災を防ぐためのポイントをご紹介していきます。
正しい使い方や安全対策を知ることで、自分だけでなく、あなたのパートナーや家族、近所の人の安全も守ることができるので、安全に使用するためのポイントを知って、火災リスクを最小限に抑えましょう。
タイマー機能・安全装置機能が付いた電気ストーブを選ぶ
電気ストーブによる火災を防ぐために、安全性を重視した機能が備わっている製品を選びましょう。中でも、タイマー機能や安全装置機能が付いた製品は安全対策として非常に効果的です。タイマー機能を備えていれば、一定時間の経過後に自動的に電源が切れるため、就寝中にも安心して利用できます。
長時間つけっぱなしになることを防いで、過熱による火災のリスクを低減できるばかりか、無駄な消費電力の削減にも繋げられます。安全装置機能が付いた電気ストーブは、過熱や異常な電流、転倒時の自動電源断などの安全対策が備わっています。
電気ストーブの付近に引火しそうなものを置かない
火災予防の重要な観点として、ストーブの周囲に燃えやすい物を置かないことが大前提です。先述の実験結果で実証されているように、熱を発する電気ストーブは周囲に燃えやすい物があると、それらが熱を受けて発火し、火災の危険性が高まります。
布団、衣類、紙類など特に燃えやすい可燃物が近くにあると、電気ストーブの熱による引火の可能性が高いです。電気ストーブの周囲には燃えにくい素材のものを置くか、できるだけ空間を空けておきましょう。家具や壁との距離も考慮して、可能な限りストーブとの間に十分な距離を確保してください。
ストーブ本体や部屋を定期的に掃除する
電気ストーブによる火災を防ぐには、定期的な掃除が必須です。ホコリや汚れが溜まると熱がこもって過熱しやすくなります。ストーブ本体や周囲の環境を清潔に保つことで、火災リスクを大きく減らせます。まずは、電気ストーブ本体を定期的に掃除しましょう。
定期的にストーブの表面や各部を柔らかい布で拭き取り、ホコリを取り除いてください。ストーブの内部にもホコリが溜まりやすいので、電源を切って本体が十分に冷えた後で、ブラシや掃除機を使って内部をお手入れしましょう。
ストーブの周囲にホコリが積もっていたり、燃えやすいゴミが置かれたままになっていたりしても危険です。燃えやすいものを置かないようにし、特に可燃物や布類、紙類をなくしたり遠ざけたりすることが火災予防に繋がります。
就寝時・外出時は電源を消す
電気ストーブを使うときに、就寝時や外出時には電源を切るよう心がけましょう。留守中や就寝中には電気ストーブを点けたままにせず、必ず電源を切るようにしてください。
長時間使用していると、電気ストーブ周辺が過熱状態になって、周囲の物に影響を及ぼす可能性があります。そして、異常な音や臭いがする場合には、すぐに使用を中止して換気を行なったり、点検を依頼したりしてください。
◆電気ストーブをつけっぱなしにしておく危険性については、以下の記事で詳しく解説しています。
適切に保管して劣化したストーブは使用しない
電気ストーブは、寒い時期にのみ活躍するシーズン家電です。シーズンオフ時には適切な保管方法で収納し、収納前にはメンテナンスも欠かさずに行ないましょう。劣化した電気ストーブは故障や不具合が発生しやすく、火災の原因になる可能性が高いです。
古くなったり劣化が進んだストーブは使用せず、処分を検討するか適切な修理を依頼してください。保管時にストーブのコードが折れたり、絶縁が剥がれたりしていないかをチェックすることも重要です。劣化や故障が見つかった場合は、修理や交換を行なうか、安全な対処方法を検討しましょう。
電気ストーブを正しく使用して火事・火災に十分気を付けよう
電気ストーブの使用には、火災を引き起こす原因が多く伴います。自分や家族、周囲の安全を守るためにも、正しい使い方を把握して、安全な使用を心がけてください。
- 可燃物から適切な距離を確保する
- 消防関連法令や取扱説明書に示された安全な距離を守る
- 電源コードやプラグの劣化をチェックして定期点検を行なう
- 断線や摩耗があれば、すぐに修理や交換を行なう
- 外出中や就寝中には使用しない
特に、子どもやペットがいる環境では、十分な警戒が必要です。ストーブに触れたり近づいたりしないよう工夫しながら、安全な状態で使用しましょう。
電気ストーブは快適な暖房装置ですが、適切な取り扱いと安全対策が必須です。火災や事故を未然に防ぐために、正しい使い方と安全対策をしっかりと実践しましょう。
◆おすすめの電気ストーブは、以下の記事にて詳しく紹介しています。