弁当や惣菜の容器として生活には欠かせない存在の発泡スチロール。
発泡スチロール容器に入った弁当を電子レンジで加熱や解凍する際、材質が溶け出すのではないかと不安ですよね。
溶けた発泡スチロールから有害な化学物質が食品に混入するのではないかという心配もあります。
本記事では、発泡スチロールを電子レンジで加熱したら有害なのかどうか、実際にどのようなリスクが考えられるのかを詳しく解説していきます。
この記事でわかること
- 弁当の容器などに使用されている発泡スチロールは、電子レンジで加熱すると溶けて変形するので、加熱用容器としては向いていない
- 溶けた発泡スチロールは、人体には無害であり、誤って食べてしまっても排出される
- 電子レンジでの加熱の際には、ガラスや陶器などの容器に移し替えることがおすすめ
発泡スチロール容器は電子レンジで加熱できる?
できるだけ洗い物を増やしたくないから、スーパーで買ってきた惣菜をそのままの容器で温めたい…。
でも発泡スチロールの容器って、レンジに入れちゃだめなんだっけ?
そもそも発泡スチロール容器は電子レンジで加熱できるのでしょうか。
まずは、発泡スチロールが電子レンジで加熱できるのかどうか、そして安全なのかどうかを詳しく解説していきましょう。
適切な使用方法を学んで、安全に電子レンジでの加熱・調理を行なってください。
電子レンジで「あたため」の加熱はできない
発泡スチロール容器は、電子レンジの「あたため」機能、つまり加熱は推奨されていません。
発泡スチロールはポリスチレンという化学物質から作られており、特定の温度に達すると形状が変わり始めて縮んでしまいます。
発泡スチロールを加熱して縮んだときには異臭もあるので、気持ちよく食事ができないかもしれません。
食品を安全に加熱するためには、耐熱性のあるガラス製や陶磁器製の容器の使用が推奨されます。
「解凍」であれば加熱できる
電子レンジの「あたため」加熱は発泡スチロール容器が溶けてしまいますが、「解凍」モードであれば加熱可能です。
解凍モードは加熱モードと比べて低い温度で動作するため、発泡スチロールが縮むリスクが減少するためです。
買ってきたパックのお肉や魚をそのまま冷凍してしまっている場合でも、電子レンジに入れてサッと解凍することが可能です。
発泡スチロール容器の例
発泡スチロール容器は広く利用されており、特にファーストフードやスーパーマーケットでの食品トレイなどで多く見かけるでしょう。
大手牛丼チェーン店の吉野家やすき家のテイクアウト弁当も、ほとんどが発泡スチロール製の容器に入れて提供されています。
発泡スチロール容器は軽量で保温性にすぐれているため、温かい食事を温かいまま運べるというメリットがあるためです。
ほっともっとなどのテイクアウト専門の弁当店も発泡スチロール容器を使用しています。
発泡スチロール容器は使用後の処理が簡単で、コストパフォーマンスも高いことから、多くの店舗や業者に選択されています。
発泡スチロール容器を加熱したらどうなる?
もし発泡スチロール容器を電子レンジで加熱した場合、どのような変化が起こるのでしょうか。
ここからは、熱に非常に弱い性質の発泡スチロールが加熱されたとき、具体的に何が起こるのか、食の安全や私たちの健康にどのような影響を与えるのかを解説していきます。
発泡スチロール容器への正しい知識を持ち、誤った使用を避けましょう。
容器が縮む
発泡スチロールの耐熱限界は約80~90℃です。この温度を超えた場合、発泡スチロールは縮小します。
変形することもあれば、縮んで容器に穴が開くこともあります。
発泡スチロール容器を電子レンジで加熱すると、高温に耐えきれずに発泡スチロールが軟化して縮みます。
同じ発泡スチロール容器で販売されているカップ麺の容器が熱湯を注いでも縮まないのは、耐熱性が強化された特殊な発泡スチロールが用いられているからです。
ポリエチレン(PE)やポリプロピレン(PP)などの耐熱性プラスチックでコーティングされています。
ポリエチレンの融点は110℃、ポリプロピレンの融点は160℃と高温に耐えられるため、熱湯を注いでも容器が変形する心配はありません。
加熱した発泡スチロールは有害?
発泡スチロールは、2%の石油と98%の空気から作られてるため、プラスチックと比べてみると省資源で環境にやさしい素材です。
発泡スチロールは食べてしまったとしても問題はありません。発泡スチロールの成分は人体で消化・分解が可能であり、 環境ホルモン等の有害な物質は一切含まれておりません。
引用:発泡スチロールの環境性 | 松原産業
発泡スチロールを燃やすと環境へ悪影響という印象がありがちですが、成分には環境ホルモン等の有害物質は含まれていないため、人体には無害です。
加熱によって発泡スチロールが縮んで容器に穴が開くと、成分が溶け出してしまったのではないかと不安ですよね。
しかし、これは縮んで容器に穴ができてしまっただけで、成分が溶け出すということはありません。
発泡スチロールの成分自体も人体には無害であるため安心してください。
うっかり破片を食べたらどうなる?
誤って電子レンジなどで発泡スチロール容器を加熱した場合、容器の縮小によって小さな破片などが生じる可能性もあります。
もしくは容器の破損に気が付かず、小さな破片をうっかり誤食してしまったなんてこともあるかもしれません。
発泡スチロールの欠片が誤って体内に入っても、プラスチックと同じく胃液で溶けないので消化されずに体外へ排出されます。
したがって少量の欠片程度の誤食であれば体調にはほとんど影響がなく、焦って病院を受診する必要はありません。
電子レンジ内に発泡スチロールが付着したら
発泡スチロール容器を電子レンジで加熱してしまうと、成分が軟化して縮んだ容器がレンジの庫内に付着する恐れがあります。
続いては、もしレンジ内に発泡スチロールが付着してしまった場合に取り除く手順、必要な掃除用具や注意点を解説していきます。
発泡スチロールを加熱すると異臭が生じるため、下記の手順を参考にしてなるべくはやく取り除き、食品に臭いが移らないようにしましょう。
温水で除去する
付着した発泡スチロールの除去には、温水を含ませた柔らかい布やスポンジを使った方法が効果的です。
道具や洗剤などを使わずに手軽に落とせます。
念のため、温水を使う前には電子レンジのプラグをコンセントから抜いておき、安全を確保してから作業を始めましょう。
熱湯は電子レンジの内部コーティングを傷つける可能性があるため、手で触れられる程度のぬるま湯が最適です。
布に温水を十分に浸してから、発泡スチロールが付着している部分をやさしく拭き取ります。
何度か繰り返して拭き取るうちに、付着した発泡スチロールが徐々に取り除かれます。
もし付着してから時間が経って硬化している場合は、布を温水に浸してしばらく放置し、その部分を湿らせておきましょう。
硬化した発泡スチロールが柔らかくなって除去しやすくなります。
温めた重曹水で拭き取る
掃除用として重曹を常備していれば、温めた重曹水で拭き取るのも効果的です。
重曹水を温めて蒸気に変え、発泡スチロールの付着や庫内の油脂汚れ、こびり付きなどを落としやすくする方法です。
耐熱容器に水200mlを入れて重曹大さじ1程度を溶かし、それをレンジに入れたら500〜600Wで5分ほど加熱します。
加熱後は蒸気を庫内のすみずみまで行き渡らせるために、扉を閉めた状態で30分ほど放置します。
そのあとは、布巾などで庫内についた水滴を拭き取るように庫内を掃除してください。
時間が経過した付着汚れには、キッチンペーパーを重曹水に浸して掃除するのも効果的です。
さらに頑固な付着汚れには、重曹水に浸したキッチンペーパーを被せておき、しばらく放置した後に拭き取ると良いでしょう。
溶剤を使用する
発泡スチロールの頑固な付着汚れには、ビニール溶剤を使ったクリーニングもおすすめです。
発泡スチロールの成分はほとんどが空気なので、ネイルの除光液などにも使われるアセトンを使うとスチロール樹脂が溶けます。
他にもシンナーやトルエンなどの溶剤も使用可能です。
ただし溶剤を使ったクリーニング後は特有の臭いが残るので、溶剤での除去後は中性洗剤などでしっかりと拭き取り、よく換気してください。
発泡スチロール容器から移し替えよう
電子レンジでの加熱や調理時には、容器が電子レンジに対応しているかどうかを確認することが大切です。
以下の素材はレンジ加熱を行なうと危険ですので、必ず避けてください。
- アルミホイル
- 金属製の容器
- ペットボトル
- ビニール袋
- 木製の容器
テイクアウトしたごはんや惣菜を加熱する場合には、発泡スチロール容器から安全な素材へ移し替えてから加熱しましょう。
以下は電子レンジで安全に使える容器素材です。
素材 | 特性 | 利点 |
---|---|---|
耐熱ガラス製容器 | 耐熱性が高い 化学反応を起こしにくい | 透明で中身が見えるため便利 |
陶磁器製品 | 均一に加熱できる | 保温性にすぐれている |
プラスチック容器(レンジ対応表記) | 特定の温度まで耐える設計 軽量 | 取り扱いが簡単 洗浄後の再利用が可能 |
クッキングシート | 高温・油脂に強い 非粘着性 | 使い捨てられる 直接加熱が可能 |
耐熱ガラス製容器は高温での使用に適しているだけでなく、透明性が高いため調理中の食品の様子を簡単に確認できます。
オーブンや冷蔵庫でも使用可能で汎用性が高いです。
陶磁器製品は、熱をゆっくりと均一に食品に伝えるため焼きムラが少ないのが特徴です。保温性が高く、食品を温かい状態で長時間保てます。
レンジ対応のプラスチック容器は熱に強い特定のプラスチック製で、軽量で扱いやすく食洗機に対応しているものがほとんどです。
これらの容器がない場合には、クッキングシートを使うのもおすすめです。
食品がレンジにくっつくのを防ぎ、庫内やターンテーブルを汚しません。使用後は捨てるだけなので後片付けも楽です。
また、発泡スチロール容器でも特殊加工された容器ならばレンジ加熱が可能です。
ポリプロピレンでコーティングされた容器は底や側面に「PP」マークが記載されており、電子レンジで加熱できます。
電子レンジで発泡スチロール容器を加熱してはダメ!
本記事では、発泡スチロール容器を電子レンジで加熱することの危険性について詳しく説明しました。
電子レンジでの加熱は非常に便利ですが、発泡スチロール容器を使って加熱するのはやめましょう。
買ってきた弁当や惣菜を電子レンジで温める際には、必ず耐熱ガラス製容器やレンジ対応のプラスチック容器など、レンジの加熱に対応している容器に移し替えてから行なってください。
容器が縮小してレンジ庫内にこびりついてしまった場合には、お湯や重曹を混ぜた温水を使って掃除するときれいに落とせます。
もし誤って発泡スチロール容器の一部や破片などを口にしても、消化されずに体外へ排出されますが、摂取しないことが賢明です。
レンジでの加熱時には容器の耐熱性を意識して、弁当や惣菜をおいしく安全に温めましょう。