食洗機にはあらかじめ「乾燥機能」が備わっているものも多いです。
手洗いした食器を乾燥させることも、盛り付け前の食器を温めたりすることもできるので便利で優れた機能と言えるでしょう。
中にはちょっと手洗いした食器を乾燥する目的で、乾燥機能のみを使用している人も多いのでは?
もちろん、乾燥機能のみを使用することは可能ですが、思わぬデメリットが起こっていることもあります。
食洗機の乾燥機能のメリット・デメリット、使い方をしっかり把握して、あなたの家庭ではどの方法が効率的かつ経済的かを探ってみてください。
この記事でわかること
- 食洗機の乾燥機能のみを使用することは、機能的には可能
- 食洗機は、洗浄より乾燥に電力を使うので、乾燥のみで使用しても節約にはならず、電気代は比較的高くつく
- 乾燥のみを使うなら、ヒーター乾燥よりも省電力な送風乾燥やオートオープン機能を搭載したモデルが電気代的にもお得
食洗機の乾燥方式の種類
食洗機の乾燥方式にもいくつかあり、ヒーターを使う「ヒーター乾燥」や「温風乾燥」、風の力で乾燥させる「送風乾燥」、また「オートオープン」乾燥方式というものがあります。
食洗機の乾燥機能はとても便利な機能ですが、実は機能の使い方によって乾き方、電気代にも違いが生じるのです。
それぞれの乾かし方の詳細を説明していきます。
温風乾燥・ヒーター乾燥
温風、ヒーター乾燥は電気の力を使って熱風や温風で乾燥させる乾燥方式です。
乾燥のスピードが速いことと、仕上がりの乾燥度合が高いという強みがあります。日本メーカーの食器洗い乾燥機に多く採用されている乾燥方式です。
カラッとしっかり食器が乾くので便利で衛生的な反面、ヒーター機能は熱を発生させるために電力をかなり使いますので、どうしても電気代として割高になってしまいます。
もし強力なヒーター機能を使用する時は時間設定を短くしたり、温度設定を低めに設定したりすることで少し節約に繋げられます。
送風機能
送風機能は、最終加熱すすぎ終了後、庫内の余熱をもって送風として風を利用して乾かす方法です。
熱を起こすための電力が不要であるため、ヒーターの乾燥に比べて、コストはかなり下がりますが、食器が乾ききらなかったり、少量の水気が残ってしまったりといった点がデメリットであるとも言われます。
仕上げに手拭きをしなければならないこともあるため、それが苦にならない人にはおすすめです。
また電気代が安いので、長めに乾燥機能を回しておくことも一つの手でしょう。
オートオープン機能
オートオープン機能というのは、食洗機の運転後、自動でドアが開き、蒸気を逃がすことで結露やにおいのこもりを緩和させる機能です。
電気を使わず、自然乾燥を促す方法であるため、かなり省エネであることはもちろん、温風乾燥、送風乾燥よりかなり消費電力は抑えられます。
食洗機のドアが数センチだけ開いて、自然乾燥を促します。デメリットは、やはり乾き方が甘いという点がありますが、エコで電気代もかかりません。
食洗機の乾燥機能のみを使用してもいいの?
食洗機には乾燥機能が備わっています。通常何も設定しないで運転させると、食器の洗浄後に食器乾燥までが一連の流れになっています。しかし自分で設定をすることによって洗浄だけ、乾燥だけという風に使用することが可能です。
手洗いをして食洗機で乾燥のみ運転させるということは機能としては可能ですが、ヒーターで乾燥させる食洗機の場合、電力を使うので電気代の高騰につながります。
また、乾燥機能だけを使用し続けることで、下水道からの臭いや害虫の侵入を防いでいる封水トラップの水が干上がってしまい、嫌な臭いが発生することもあり得ます。
乾燥機能のみを使うだけでなく、定期的に洗浄モードも利用したり、空洗浄をおこなったりすることで、この封水の蒸発を防ぐことが可能です。
食洗機の洗浄・乾燥の電気代の目安
食洗機を使って洗浄や乾燥をおこなうと、どれくらいの電気代がかかるのでしょうか?
手洗いよりも水道代を節約できると言われているものの、電気代はどれくらいかかるのか気になる人も多いでしょう。
食洗機1回使用あたりの電気代について解説します。
食洗機を使用した際の電気代の目安
食洗機を使って洗浄と乾燥をおこなった場合の電気代について考えてみましょう。ここでは、パナソニックの食洗機を例にとって、電気代を試算してみます。
機種 | 消費電力 | 1回あたりの電気代 |
---|---|---|
ビルトイン食洗機 パナソニック NP-45MD9S | 0.45kWh | 約13.95円 |
ファミリー向け据え置き食洗機 NP-TZ300 | 0.77kWh | 約23.87円 |
単身向け据え置き食洗機 NP-TML1 | 0.23kWh | 約7.13円 |
パナソニックの「手洗いVS食洗機 節約シミュレーション」によると、1日に2回食器洗いをおこなうと仮定すると、食洗機を使った場合、手洗いに比べて、年間で以下のような節約が見込めるとされています。
- 一人暮らし:4,800円
- 2~3人暮らし:6,700円
- 4人暮らし:11,000円
手洗いでも、冬場はお湯を使うこともあるため、ガス代がかかるでしょう。水道代・電気代・ガス代すべてを考慮しても、食洗機を使った方が手で洗うよりもコスト削減につながることがわかります。
食洗機の乾燥のみを使用した際の電気代の目安
食洗機の消費電力は、洗浄よりも乾燥によって消費されます。以下、各食洗機の洗浄と乾燥1回分にかかる電気代を例として見ていきましょう。
機種 | 洗浄時 消費電力 | 乾燥時 消費電力 | 洗浄1回あたりの 電気代 | 乾燥1回あたりの 電気代 |
---|---|---|---|---|
パナソニック NP-TZ300(ヒーター) | 0.085kWh | 0.55kWh | 約2.6円 | 約17円 |
AQUA ADW-GM3(送風乾燥) | 0.078kWh | 0.275kWh | 約2.4円 | 約8.5円 |
コースの内容によって多少消費電力や電気代は変わりますが、大まかに見ても、洗浄1回あたりに比べて、乾燥1回分は3~6倍程度の電気代がかかることがわかります。
つまり乾燥のみを使うことは、特段節約につながるわけではありません。むしろ、洗浄から使った方が水道代の削減につながるため、節約になるかもしれません。
またヒーター乾燥と送風乾燥では、約2倍程度の電気代の差があります。節約を気にする人は、送風乾燥を選ぶのがおすすめ。
ヒーター乾燥搭載の食洗機であれば、運転時間を極力短くすることで、節約ができるでしょう。
食洗機の温風乾燥のみを使用するデメリット
食洗機のヒーター機能の乾燥をするには確かにコストが気になりますが、コストを気にして「温風乾燥」のみを使用にするのはデメリットもあります。
デメリットを踏まえて注意しながら、使用を考えるとよいでしょう。
食器が乾燥しきらない場合がある
乾燥機能のみの場合、熱が弱く食器が乾燥しきらないことが考えられます。洗浄からおこなっていれば、高温の洗浄水により食洗器庫内が高温になるため、食器自体に余熱が残っている上でさらにヒーターで熱風を送ることができます。
しかし乾燥のみの場合は食器自体に熱がなく、温風のみの力だと完全に乾かすことができない場合があります。
そのため水滴が残ったり、水滴の水跡が残ったりしてしまう可能性があるでしょう。
さらに乾燥機能を使い続けることによって、食洗機庫内自体にも水分が残ってしまうことも考えられます。庫内に湿気が残った状態が続くと、カビやぬめりなどの原因になり不衛生です。
ドアを開けて乾燥させたり、定期的に掃除をおこなったりするなどして、お手入れが必要になります。
トラップ内の封水が蒸発して臭いが発生する
食洗機乾燥機の排水経路には封水トラップがあり、トラップに水を溜めておくことで配管から悪臭や害虫が生活空間へ上がらないよう設計してあります。乾燥機能だけを継続して使用していると、この封水トラップの水が蒸発してしまい、嫌な臭いが発生してしまうのです
これを防ぐためには、乾燥ばかり使用するのではなく、洗浄機能も定期的に使用することが大切です。
どうしても乾燥のみを使い続ける場合には、月に2~3回程度、食洗機専用の洗剤で運転して食洗機庫内を洗浄したり、空の状態で洗浄を回したりして、水を流すことを意識すると良いでしょう。
庫内は基本的に汚れやすいため、定期的に水を流すことは、封水トラップの蒸発を防ぐためだけでなく、庫内の衛生面を考えても重要です。
電気代が高くつく
食洗機の電気代は、洗浄よりも乾燥の方がコストが高くなります。つまり乾燥機能だけを使用し続けても、電気代はあまり減らず、思ったよりも高くつくことになるでしょう。
乾燥機能のみの使用を節約目的でおこなっているとすると、あまり効果的ではありません。むしろ洗浄から乾燥までおこなった方が、家事が時短できる上、水道代の節約にもつながります。
食洗機を使用しながら節約を考えるのであれば、乾燥時間を短くしたり、送風やオートオープン機能を搭載した食洗機を選んだりしたほうが効果的と言えるでしょう。
食洗機の乾燥のみを使用する場合のポイント
食洗機の乾燥機能のみを使用していく上でのデメリットを説明してきましたが、上手にポイントを押さえて使用することで、清潔を保ちながら節約につなげることも可能です。
食洗機の乾燥機能のみを使用していく上で、心がけたいポイントを解説していきます。
最低月1~2回は通常モードを使用する
食洗機の乾燥機能だけを使用し続けることで、庫内の汚れや嫌な臭いにつながる可能性があります。このような状態を防ぐためにも、最低月に1~2回は洗浄から乾燥までを使う通常モードを使用しましょう。
通常モードで運転することにより庫内も洗浄され、しっかり乾燥もできるため庫内を清潔に保つことができます。
また水を循環させて排水を促すことで、封水トラップの蒸発も防げます。日々乾燥をメインに利用している人でも、月に1~2度の通常の洗浄モードを利用して、定期的に水を流すことを意識しましょう。
庫内の洗浄を定期的におこなう
食洗機の乾燥のみを使用し続けると、庫内の汚れが溜まりやすくなり、不衛生になってしまいます。
庫内の洗浄と封水の蒸発防止のためにも、庫内洗浄をおこないましょう。庫内洗浄をするときは、専用の洗剤を入れて通常モード、またはお手入れモードなどを運転させます。
残さいフィルターなどの細かなパーツも汚れやすいため、定期的にブラシなどで掃除をおこないましょう。
◆食洗機の正しいクリーニング方法は、こちらの記事で詳しくご紹介しています。あわせてご覧ください。
食器乾燥機を使用する
食洗機の乾燥だけを主に使用している家庭では、もしかすると食器洗い乾燥機自体が不要であるのかもしれません。
そのような家庭では、食器専用乾燥機を購入するのもひとつの手でしょう。手洗いの方が勝手が良く、乾燥だけはしっかりと機械に頼りたい方は、食器乾燥機の方が威力も強いのでおすすめ。
食器洗い乾燥機のように、あえて洗浄を回すなどといったお手入れに気を配る必要もなくなります。
ビルトイン食洗機を使用している家庭ではなかなか難しいかもしれませんが、据え置きの食洗機を使用している場合には、家電の種類自体の変更を検討してもよいでしょう。
食器乾燥機は、食器洗い乾燥機よりも費用も安いため、乾燥機能を特に目的としている人におすすめです。
食洗機の乾燥のみの使用は可能!でも定期的なお手入れは必要
食洗機の乾燥のみの使用は可能です。しかし食洗機の乾燥のみを使用し続けるデメリットとして
- 食洗機内の清潔が保てない
- 電気代が高つく・思ったほど削減できない
- 封水が蒸発して嫌な臭いの原因になる
といったことが挙げられます。ヒーター式であれば乾燥は完璧にできますが、電気代は高くなりやすく、家計にも大きな影響を与えかねません。
もし食器の乾燥機能のみを使用したいのであれば、定期的な庫内洗浄や通常モード運転をおこなうことで庫内の清潔を保つことが可能です。さらに食器の専用乾燥機を取り入れることも一つの手でしょう。
食器の洗浄から乾燥までを任せられる食器洗い乾燥機ですが、清潔に使い続けるためには定期的なお手入れが必要です。
乾燥のみを使用する場合にはさらに気を付けなければならない点もあるため、しっかり理解し、正しく衛生的に使用しましょう。