太陽光の名義変更をしないとどうなるのか|認定は失効しないが放置できない理由

太陽光パネルが載った家を売った、買った、あるいは親から相続した。
そんなとき「売電の名義変更をしないと認定が取り消される」と説明され、不安になった方は多いと思います。
ところが法律の条文を確かめると、名義変更をしていないことは、認定が失効する理由として定められていません。
罰則も設けられていません。
この記事では、公式に定められていることと定められていないことを線引きしたうえで、それでも手続きを先延ばしにできない実務上の理由を整理します。
- 名義変更をしなかったとき、法律上ほんとうに起きること
- 手続きは国と電力会社の2か所に出すこと、その順番
- 売買と相続で申請の種類が変わること
- 名義変更では売電単価が下がらないこと、下がる例外
- 大手電力会社10社の窓口と受付方法の横断比較
太陽光の名義変更は国と電力会社の2か所に出す
太陽光の名義変更でつまずきやすいのは、手続きの窓口が2つあることです。
ひとつは国で、事業計画の変更手続きを行います。
もうひとつは電力会社で、売電の受給契約の名義を変更します。
FIT/FIP制度の代行申請センターも「FIT制度で決められた買取価格で売電をするためには、電力会社での手続きの他に、国へも事業計画の変更を届け出る必要があります」と案内しています(出典:FIT・FIP制度 代行申請センター)。
そして順番は国が先です。
電力会社に名義変更を申し込む際、国の手続きが受理されたことを示す書類の提出を求められるためです。
資源エネルギー庁の変更手続の整理表にも「名義変更など、変更手続に伴い特定契約の変更が必要になる場合は、『変更認定通知書の写し』または『事前/事後変更届出の受理日が分かるもの』が必要となるため、電力会社へ提出してください」と記載されています(出典:資源エネルギー庁 変更内容ごとの変更手続の整理表)。
東京電力エナジーパートナーも「継続して当該制度の適用を受けるためには、先に国への事業計画変更認定を申請いただく必要があります」と明記しています(出典:東京電力エナジーパートナー公式サイト)。
国に出す手続きは、売買や贈与か、相続かで種類が変わります。
| あなたのケース | 国に出す手続き | 主な必要書類 |
|---|---|---|
| 売買・生前贈与など事業譲渡にあたる場合 | 変更認定申請10kW未満は様式第4 | 譲渡契約書または譲渡証明書、双方の住民票等、双方の印鑑証明書 ほか |
| 相続による場合 | 事後変更届出様式第6 | 被相続人の戸除籍謄本、法定相続人全員の戸籍謄本と印鑑証明書、遺産分割協議書または全員の同意書 ほか |
| 買取期間が終わった卒FIT後の場合 | 売買や贈与は卒FIT事前届出、相続は様式第6の事後変更届出 | 添付書類は原則不要。ただし代行事業者が申請する場合は委任状と印鑑証明書が必要 |
買取期間そのものが満了したあと、売電先をどう決めるかは別の手続きになります。
何もしないとどうなるのか、いつまでに申し込むのかは 卒FITの売電先は後から変えられる で整理しています。
しないとどうなるのか法律が定めているのはここまで
ここが多くの解説と食い違うところです。
再生可能エネルギー電気の利用の促進に関する特別措置法を確かめると、名義変更をしていないことは、認定が失効する理由として挙げられていません。
同法第14条が定める失効の事由は、事業を廃止したときと、経済産業省令で定める期間内に事業を開始しなかったときの2つだけです(出典:e-Gov法令検索 再生可能エネルギー電気の利用の促進に関する特別措置法)。
いっぽうで、認定を取り消す制度そのものは存在します。
同法第15条は、認定計画に従って事業を実施していないときなどに「認定を取り消すことができる」と定めています。
ただしこれは取り消すことが「できる」という規定であり(出典:e-Gov法令検索 再生可能エネルギー電気の利用の促進に関する特別措置法)、名義変更をしていないことがこれに当たると明記した公式の文書は見当たりません。
「必ず取り消される」と読むのは行き過ぎで、「取消しの制度はあるが、名義変更の未了が該当するとは公にされていない」というのが正確なところです。
罰則についても確認しました。
同法の罰則の条文には、変更認定や変更届出を定めた第10条の違反も、改善命令を定めた第13条の違反も挙げられていません。
つまり名義変更をしなかったことに対する罰金などは定められていません(出典:e-Gov法令検索 再生可能エネルギー電気の利用の促進に関する特別措置法)。
なお、経済産業大臣による指導・助言や改善命令の制度は同法第12条・第13条に設けられています。
| よく言われること | 条文を確かめた結果 |
|---|---|
| 認定が失効する | 失効の事由に含まれない。事由は事業の廃止と、省令で定める期間内に事業を開始しなかったことの2つのみ |
| 認定が取り消される | 取消しの制度はあるが、名義変更の未了が該当するとは公式に書かれていない |
| 罰則がある | 罰則の条文に第10条・第13条の違反は挙げられていない |
それでも放置できない2つの事情
では急がなくてよいのかというと、そうではありません。
理由は法律の罰ではなく、手続きにかかる時間と、お金の入り口が変わらないことです。
ひとつめは時間です。
資源エネルギー庁は「申請してから認定まで3ヶ月程度(10kW未満太陽光は2~3ヶ月程度)かかります」と案内しています(出典:資源エネルギー庁 変更認定申請・変更届出)。
住宅用でも2〜3ヶ月かかり、そのあとに電力会社の手続きが控えています。
引き渡しの日から逆算して動かないと、名義が前の所有者のまま何か月も過ぎることになります。
ふたつめはお金の入り口です。
電力会社の手続きでは、契約名義の変更と売電代金の振込先口座の変更が、別の申込項目として扱われています。
中部電力パワーグリッドは低圧の申込区分を「名義変更・・・世帯主変更、会社名変更などに伴うご契約名義の変更」「振込先変更・・・ご契約中の振込先口座を変更」と分けて定義しています(出典:中部電力パワーグリッド公式サイト)。
申し込まないかぎり、登録されている内容は変わりません。
名義と口座を1枚の様式にまとめている会社もありますが、その場合も変更区分は分かれています。
振込先も変えるなら、その区分をあわせて申し込む必要があります。
国の認定に2〜3ヶ月、そのあとに電力会社の手続きが必要です。
売買の日程が見えた時点で書類集めを始めます。
再生可能エネルギー電子申請から手続きします。
50kW未満の太陽光の問い合わせ先はJPEA代行申請センターで、問い合わせ方法は電話のみです(出典:資源エネルギー庁 変更認定申請・変更届出)。
変更認定通知書の写しなどを添えて、契約先へ名義変更を申し込みます。
振込先口座を変える場合は、その区分も忘れずに選びます。
売電単価は名義変更では下がらない
もうひとつ心配されるのが、名義を変えると買取価格が今の低い水準に下げられるのではないか、という点です。
結論から言うと、事業譲渡や相続による名義変更では、調達価格は変わりません。
資源エネルギー庁の変更手続の整理表は、凡例で「○は調達価格/基準価格が変わらないもの、●は調達価格/基準価格が変わる可能性があるもの」と定めており、事業譲渡等の場合も相続による場合も○が付いています。
さらに、価格が変わる変更だけを集めた別の整理表を見ると、太陽光で挙げられているのは出力の増加、太陽電池の合計出力の増減、自家発電設備等の設置、接続契約締結日の変更の4つだけで、事業者の変更は一行も載っていません(出典:資源エネルギー庁 調達価格/基準価格が変更される事業計画の変更整理表)。
引越しや移設についても「『接続契約日』の変更手続きは必要ありませんし、価格も変わりません」と明記されています(出典:資源エネルギー庁 平成29年8月31日公布・施行のFIT法施行規則・告示改正のポイント)。
ただし例外があります。
ここが実務でいちばん注意すべきところです。
いずれも 資源エネルギー庁 FIT・FIP制度に関するよくある質問 に記載があります。
| 起きること | 価格への影響 |
|---|---|
| 名義変更として手続きした場合 | 調達価格は変わらない |
| 接続契約がいったん解除され、結び直された場合 | 接続契約締結日の変更にあたり、変更認定日の価格になる |
| 太陽光が載った空き家に転入し、新しく売電を始めた場合 | 完全に新規の契約となり、小売買取は続けられず送配電買取の対象になる |
つまり怖いのは名義変更そのものではなく、名義変更をせずに、いったん解約して契約し直してしまうことです。
買取価格の水準がなぜ年々変わってきたのかは 再エネ賦課金の見通し で、小売買取と送配電買取という仕組みの違いは 電力自由化とは で整理しています。
売買と相続で見落とされること
手続きの種類より先に落とし穴になりやすいのが、契約書や協議書の書き方です。
資源エネルギー庁 変更内容ごとの変更手続の整理表は「太陽光パネルは、建物附属設備として認められているものではないため、事業譲渡の際は、建物と別に明示することが必要」としています。
つまり家を売買しても、太陽光パネルは自動的には付いてきません。
相続でも同じで、太陽光パネルを含むすべてを相続対象とした記載にするなど、相続対象に発電設備が含まれていることが確認できる必要があります。
ここを書き漏らすと、書類がそろわず手続きが止まります。
相続の期限も誤解されがちです。
法律は「遅滞なく」届け出ることを求めていますが、何日以内という数字は定められていません(出典:e-Gov法令検索 再生可能エネルギー電気の利用の促進に関する特別措置法 第10条第3項)。
整理表にも条文にも日数の記載はないため、「相続から◯ヶ月以内」といった説明を見かけたら、その根拠を確かめたほうが安全です。
もうひとつ、住宅用では不要な手続きがあります。
令和6年4月に改正された再エネ特措法では、事業計画の認定にあたって説明会や事前周知措置の実施が求められていますが、出力10kW未満の住宅用太陽光は、その対象外とされています(出典:資源エネルギー庁 説明会及び事前周知措置のポイント)。
一般的な住宅に載っている出力10kW未満の設備であれば、説明会の準備は要りません。
大手電力会社10社の名義変更の窓口
国の手続きが済んだら、契約している電力会社に名義変更を申し込みます。
受付の方法は会社によって異なり、書面の郵送が中心でインターネット受付は限られます。
| 電力会社 | 受付方法 | 気をつけたいこと |
|---|---|---|
| 北海道電力 | 書面 | 名義と振込先口座が1つの様式にまとまっている |
| 東北電力ネットワーク | 書面を郵送 | 変更認定通知書の写し等が必要 |
| 東京電力エナジーパートナー | 書面をメールまたは郵送 | 契約の締結時期によって窓口が分かれる |
| 中部電力パワーグリッド | インターネット | 受理を示す書類が必須。書面提出を求める場合もある |
| 北陸電力 / 受付方法 | 郵送 | 名義変更にともない買取先が送配電会社に変わる |
| 関西電力 | 書面 | 2017年4月以降の契約は関西電力送配電が買取事業者になる |
| 中国電力 | 書面を指定の宛先へ | 名義変更に事業承継が含まれる |
| 四国電力送配電 | 書面を管轄事業所へ | 変更認定通知書の写し等が必要 |
| 九州電力 / 九州電力送配電 | 郵送 | 書留やレターパックでの送付 |
| 沖縄電力 | 書面 | 事業譲渡等では名義変更ではなく解約と新規申込になる |
とくに2社は扱いが他と違います。
北陸電力は「相続や事業譲渡等、発電事業者さまの変更に伴う名義変更の場合は、買取先が当社から北陸電力送配電株式会社となります」と案内しています(出典:北陸電力公式サイト)。
沖縄電力は「事業譲渡等での変更の場合は、前契約者からの解約のお手続と、新契約者からの契約申し込みのお手続が必要となります」としており、名義変更としては受け付けていません(出典:沖縄電力公式サイト)。
この形をとったときに買取の条件がどうなるかは公式に説明がないため、着手前に沖縄電力へ直接確認してください。
太陽光の名義変更とあわせて読みたい記事
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よくある質問
まとめ
太陽光の名義変更は、しなかったからといって認定が自動的に失効するわけではなく、罰則も定められていません。
その意味で、よく言われるほど恐ろしい話ではありません。
それでも先延ばしできないのは、国の認定に2〜3ヶ月かかり、そのあとに電力会社の手続きが控えているからです。
売電代金の振込先も、申し込まないかぎり変わりません。
名義変更そのもので売電単価が下がることはありませんが、解約して契約し直すと価格の条件が変わります。
家の売買や相続では、太陽光パネルを契約書や協議書に別途書き込むことも忘れないでください。
手続きの窓口は会社ごとに違い、北陸電力や沖縄電力のように扱いが異なる会社もあります。
太陽光がある家の電気の手続きでお困りなら
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