AIに、顧客名や住所をそのまま入力していませんか?
「AIに顧客対応メールを作らせたら、驚くほど楽になった!」 そう喜んでいるのも束の間。もしあなたが、AIの入力欄にお客様の本名や住所、あるいは「売買契約書のPDF」をそのまま放り込んでいるとしたら……それは「会社の機密情報を、ネット上の掲示板に貼り付けている」のと同じくらい危険な行為かもしれません。
AIは、入力された情報を「学習データ」として取り込んでしまう性質があります。今回は、不動産会社がAIを利用する際に絶対に守るべき「鉄則」を分かりやすく解説します。
なぜ「個人情報」を入力してはいけないのか?
ChatGPTなどのAIは、ユーザーが入力した情報を学習し、より賢くなるように設計されています。
―情報の再利用
あなたが入力した「〇〇様(実名)のローン審査状況」という情報が、巡り巡って他のユーザーの回答に使われてしまうリスクがゼロではありません。
―運営会社のデータ保持
入力した内容は運営会社のサーバーに記録されます。万が一、そのサービスがサイバー攻撃を受けた場合、情報漏洩に繋がる恐れがあります。
あなたの入力が、ライバルの回答になる?
これが最も恐ろしいリスクです。 例えば、あなたが「Aマンション502号室の鈴木様の売却事情(離婚など)」を詳細に入力したとします。 後日、競合他社の営業マンがAIに「Aマンションの売却事例や噂はある?」と聞いた時、AIが学習したあなたの情報を元に、「502号室で離婚による売却の話があるようです」と回答してしまう可能性が理論上ゼロではないのです。
これだけは守る!AI利用の「3つの鉄則」
不動産実務でAIを使う際は、以下のルールを社内で徹底しましょう。
鉄則①:個人名は「仮名」か「伏せ字」にする
お客様へのメール案を作らせる時は、実名ではなく記号や仮名を使いましょう。
- ダメな例: 「新宿区の佐藤健二様への内見お礼メールを作って」
- 良い例: 「A様への内見お礼メールを作って」
鉄則②:住所は「エリア名」までにとどめる
物件の紹介文を作らせる際、正確な「番地・号・部屋番号」を入れる必要はありません。
- ダメな例: 「目黒区自由が丘1-2-3 〇〇マンション502号室の魅力を書いて」
- 良い例: 「目黒区自由が丘の駅近マンション(3階・角部屋)の魅力を書いて」
鉄則③:年収や家族構成などの「属性」を特定させない
「年収〇〇万円で、子供が〇人いて……」といった具体的なプロフィールを詳細に入力すると、たとえ名前を隠していても個人が特定される「プロファイリング」が可能になってしまいます。条件を伝える際は「30代ファミリー」「会社員世帯」といった抽象的な表現に留めましょう。
鉄則④:ファイルアップロードは「黒塗り」してから
最近のAIはPDFやExcelを読み込めますが、これが一番の盲点です。 「レントロール(家賃表)」や「登記簿謄本」を読み込ませる際は、必ず氏名や電話番号などの個人情報を黒塗り(マスキング)してからアップロードしてください。面倒でも、この一手間が会社の信用を守ります。
セキュリティ重視で選ぶべきAIサービス
「無料だから」という理由だけでツールを選んでいませんか? 法人利用におけるAI選定の基準は「機能」より「安全性」です。
① ChatGPT(OpenAI)
― 無料版・Plus(個人有料版)
デフォルトで学習に使われます。設定で「オプトアウト(学習拒否)」が可能ですが、社員全員が設定している保証はありません。
― Teamプラン・Enterpriseプラン(法人向け)
「入力データは学習に使われない」**と明記されています。会社で導入するなら、絶対にこちらのプランを契約すべきです。
② Microsoft Copilot(旧Bing Chat Enterprise)
― 商用データ保護(Commercial Data Protection)
Microsoft 365の法人アカウントでログインしていれば、入力データは暗号化され、学習にも使用されず、Microsoft社員すら閲覧できません。
― 見分け方
画面右上に「保護済み(Protected)」という緑色のマークが出ていれば安全です。不動産実務ではこれが最も手軽で安全な選択肢の一つです。
③ Gemini for Google Workspace
Googleのエコシステム内で完結するため、セキュリティポリシーを統一しやすいのが強みです。こちらも法人プランであれば学習データには利用されません。
もし、うっかり個人情報を入力してしまったら?
人間ですのでミスをすることもあります。もし個人情報を入力してしまった場合は、以下の対応を速やかに行いましょう。
- チャット履歴の即時削除: 多くのAIサービスでは、履歴を削除すればそのデータが即座に学習対象から外される(または一定期間後に消去される)ようになっています。
- 社内報告: 隠さずに上司やIT担当者に報告し、会社としての再発防止策を確認しましょう。
正しく守ることが、AI活用の「第一歩」
AIは、不動産会社の生産性を何倍にも高めてくれる画期的なツールです。しかし、お客様からの信頼を失ってしまえば、どんなに効率化しても意味がありません。
「AIには、世間に公開してもいい情報しか教えない」
このシンプルな原則を守るだけで、AIはあなたの心強い味方になります。ルールを守って、安全に、そして最大限にAIの恩恵を享受しましょう。
【AI入力前の5秒チェック】
- お客様の実名が入っていませんか?(「A様」へ)
- 正確な住所・部屋番号が入っていませんか?(「〇〇区のマンション」へ)
- 電話番号・メアドが入っていませんか?
- アップロードするPDFに、個人情報は残っていませんか?
- 「学習オフ」の設定、または「保護済み」マークを確認しましたか?
講師:ナカソネ
AI活用スペシャリストのナカソネです。ビジネスパーソン向けに「現場で使えるAI活用」をサポートしながら、少しでもAIに興味を持ってもらえるよう情報を発信しています!
