- かつて「まずい」と言われた大阪の水道水が、なぜモンドセレクション金賞を獲るほどおいしくなったのか
- 大阪府の水道水のほぼ100%が淀川水系1本でまかなわれている理由
- 大阪府の水道水の硬度(軟水か硬水か)と全国平均との比較
- 枚方市にある日本最大級の浄水場「村野浄水場」のしくみ
- オゾン+活性炭による高度浄水処理が、においや塩素感をどれだけ減らしているか
- 大阪市水道局の「ほんまや」がモンドセレクション金賞を獲った経緯
「大阪の水道水はまずい」は本当か?
結論から言うと、大阪府の水道水は、2011年に大阪市水道局のペットボトル水「ほんまや」がモンドセレクション金賞を受賞するほど、すでに高品質な水になっています。これは国内自治体の飲料水としては初の快挙でした(出典:日本経済新聞 2011年5月23日)。
かつて大阪の水道水は、淀川を水源とすることから「カビ臭くて飲めない」「夏になるとにおう」と全国的に揶揄されていました。実際、1980年代から1990年代にかけては、原水のアオコ由来のカビ臭物質(2-MIB・ジェオスミン)を従来の急速ろ過では除去しきれず、水道水の評価は決して高くありませんでした。
状況が変わったのは1990年代後半から2000年代初頭にかけてです。大阪府営水道(現・大阪広域水道企業団)は1998年7月までに全浄水場で高度浄水処理を全量導入し、大阪市水道局も2000年3月から全量を高度浄水化しました(出典:大阪広域水道企業団 水道・水質ミニ事典/大阪市水道局 よくある質問【水質】)。それから四半世紀以上が経った今、大阪の水道水は名実ともに別の水になっています。
大阪の水道水の水源は「淀川一本」でほぼ100%
大阪府の水道水のしくみを理解するうえで欠かせないのが、水源の特殊性です。大阪市・大阪広域水道企業団・堺市のいずれも、ほぼ100%の水を淀川水系から取っており、地下水の比率はごくわずかです(出典:大阪市水道局 大阪市の水道水源)。
淀川は、滋賀県の琵琶湖を発し、宇治川・木津川・桂川の3つの河川が合流して大阪府を通り、大阪湾へ注ぐ一級河川です。琵琶湖は面積約670km2、貯水量約275億m3を誇る日本最大の湖で、淀川流域の流量調節を一手に担っています。この淀川水系は大阪府民だけでなく、近畿圏で約1,700万人もの水道水を支えています。
| 事業者 | 水源 | 主な取水点 | 給水対象 |
|---|---|---|---|
| 大阪市水道局 | 淀川水系(ほぼ100%) | 柴島・庭窪・豊野の各取水場(取水後、同名の浄水場で浄水) | 大阪市内 |
| 大阪広域水道企業団 | 淀川水系(ほぼ100%) | 磯島取水場(枚方市)ほか | 大阪府内42市町村 |
| 堺市上下水道局 | 大阪広域水道企業団から100%受水 | — | 堺市内 |
地下水や複数の水源を組み合わせる他の都道府県と比べて、大阪府は淀川水系という1つの水源に集中して依存しているのが大きな特徴です。これは琵琶湖の水質変化がそのまま大阪の蛇口の水質に直結することを意味し、流域全体での水質保全が水道事業の生命線になっています。
大阪の水道水の硬度は?全国平均との比較
水のおいしさを左右する代表的な指標が硬度(mg/L)です。硬度はカルシウムとマグネシウムの含有量を示し、数値が低いほど「軟水」、高いほど「硬水」となります。WHOの分類では硬度60mg/L未満が軟水とされ、日本の水道水は全国平均で約50mg/L前後と一般に軟水寄りです。
| 事業者・水源 | 硬度(mg/L) | 分類 |
|---|---|---|
| 大阪市(年間レンジ) | 約40〜50 | 軟水 |
| 全国平均(参考) | 約50 | 軟水 |
| 水質基準値 | 300以下 | — |
大阪府の水道水は、いずれも軟水(硬度60mg/L未満)に分類されます。日本茶やコーヒーの抽出、和食のだしを取るのに向いており、ミネラル感が強くないためどんな料理にも合わせやすいのが特徴です。「西日本は硬水」というイメージとは異なり、大阪は東京や横浜と並ぶ軟水エリアであると覚えておくとよいでしょう。
残留塩素・カビ臭・トリハロメタンの実態
大阪府の水道水質を、いくつかの代表的な指標で見てみます。
- 残留塩素(大阪市・給水栓):約0.4mg/L (快適水質目標0.1〜1.0mg/Lの範囲内)
- pH(堺市・配水場代表値):約7.2〜7.3 (基準5.8〜8.6の中央値で安定)
- トリハロメタン(大阪市・給水栓末端):水質基準値0.1mg/Lの概ね1/10レベル
- カビ臭物質(2-MIB・ジェオスミン):検出ゼロ(高度浄水処理で除去)
- 適合状況:水道水質基準51項目すべてに適合
注目したいのは、かつての大阪の水道水を悪く言わせていたカビ臭物質(2-MIB・ジェオスミン)が、現在は検出ゼロまで除去されている点です。これらは1リットル中ごく微量(ナノグラム単位)でも人間が臭いと感じるほど嗅覚を刺激しますが、高度浄水処理によって嗅覚閾値を大きく下回る水準まで取り除かれています(出典:大阪市水道局 大阪市の水道水について)。
大阪の水道水を変えた「高度浄水処理」とは
大阪府の水道水の品質を語るうえで、必ず取り上げたいのが高度浄水処理です。これは従来の急速ろ過(凝集沈澱+砂ろ過+塩素消毒)に、オゾン処理と粒状活性炭処理を加える3段構えの処理方式です。
原水を微生物に通すことで、アンモニア態窒素を約80%除去します。これにより塩素を投入したときに発生するクロラミン(塩素臭の原因物質)を抑えられ、塩素感の少ない仕上がりになります。
オゾンの強力な酸化力でカビ臭物質(2-MIB・ジェオスミン)や有機物を分解します。塩素では落としきれない難分解性の物質を狙い撃ちできるのが特徴で、夏場のアオコ由来のにおいにもっとも効果を発揮します。
オゾンで分解された物質を、粒状活性炭の微細な穴に吸着させて除去します。活性炭の表面積は1gあたり約1,000m2もあり、わずか1グラムでテニスコート約4面分の吸着面を持つ計算です。それが小さなろ過槽にぎっしり詰まっています。
このプロセスを経た水道水は、においの強さが約5分の1、トリハロメタン類も約5分の1に低減され、残留塩素濃度も約40%下がります。大阪市が区民まつりで実施した試飲アンケートでは、参加者の98%が「おいしい」と回答するという結果が出ています(出典:大阪市水道局 大阪市の水道水について)。
日本最大級の浄水場「村野浄水場」と大阪府の浄水拠点
大阪府の水道水を実際につくっているのが、各事業者の浄水場です。大阪府は、日本最大級の処理能力を誇る浄水場を中心に、6つの浄水場で府民の水道水を支えています。
| 浄水場 | 運営 | 所在地 | 施設能力(m3/日) |
|---|---|---|---|
| 村野浄水場 | 大阪広域水道企業団 | 枚方市 | 1,797,000 |
| 柴島浄水場 | 大阪市水道局 | 大阪市東淀川区 | 1,180,000 |
| 庭窪浄水場(大阪市) | 大阪市水道局 | 守口市淀江町 | 800,000 |
| 豊野浄水場 | 大阪市水道局 | 寝屋川市 | 450,000 |
| 三島浄水場 | 大阪広域水道企業団 | 摂津市・吹田市 | 330,000 |
| 庭窪浄水場(企業団) | 大阪広域水道企業団 | 守口市大庭町 | 203,000 |
とくに注目したいのが、大阪広域水道企業団の村野浄水場(枚方市)です。施設能力は日量1,797,000 m3で、大阪広域水道企業団の製造量の約8割を1か所で担っています。地上7階・地下2階の階層式という珍しい構造で、1963年7月の稼働開始以来、大阪府の水道水の屋台骨であり続けてきました(出典:大阪広域水道企業団 水をつくる~浄水場~)。
この村野浄水場は、当時の運営主体である大阪府営水道(現・大阪広域水道企業団)が1994年に高度浄水処理の一部運用を開始し、1998年7月に全量での高度浄水処理に移行しました。大阪府民の蛇口の大半が、実質的には「枚方市の1か所の浄水場」から供給されているという事実は、府民でも知らない人が多いかもしれません。
大阪市の水道水「ほんまや」がモンドセレクション金賞
大阪の水道水のおいしさを世界に知らしめたのが、大阪市水道局のペットボトル水「ほんまや」です。これは活性炭で残留塩素を除去し、加熱殺菌した水道水をそのまま詰めたボトル水で、2007年3月から500ml100円で販売されました(出典:日本経済新聞 2011年5月23日)。
「ほんまや」は2011年5月、ベルギーで開催された国際的食品コンテストの「モンドセレクション」で金賞を受賞しました。これは国内自治体の飲料水としては初の快挙で、大阪の水道水が「淀川由来」という出自を超えて、世界の審査員に高く評価された出来事でした。
受賞のポイントは、淀川水系の水を高度浄水処理で徹底的にクリーンにしたうえで、さらに活性炭で残留塩素まで取り除いた仕上がりです。一般家庭で蛇口から出る水道水は塩素消毒のために残留塩素を含みますが、「ほんまや」は塩素感のないストレートな味わいに調整されています。
大阪市水道局の歴史と現在の規模
大阪市の水道事業は古く、1895年(明治28年)11月に給水を開始しました。これは横浜・函館・長崎に次ぐ全国4番目の近代水道事業です(出典:大阪市水道局 水道施設の紹介)。淀川を水源とする近代浄水設備は、当時の関西経済の発展と公衆衛生を支える基盤となりました。
現在の大阪市水道局の規模は次のとおりです。
- 大阪市の1日給水量(直近実績):1,088,800 m3 (令和8年5月24日)
- 大阪市の過去最大1日給水量:2,417,700 m3 (昭和45年8月6日)
- 大阪広域水道企業団 設立:平成22年(2010年)度設立、平成23年(2011年)4月事業開始
- 大阪広域水道企業団 給水対象:大阪府内42市町村(大阪市を除く)
- 大阪広域水道企業団 年間給水量:約5億400万m3 (令和5年度実績)
- 堺市給水人口:約85万人 (大阪広域水道企業団から100%受水)
(出典:大阪市水道局 皆さまにお届けしている水/大阪広域水道企業団とは/大阪広域水道企業団 統計年報(令和5年度)/堺市 堺市の水道事業)
注意すべき点として、大阪市の管路は法定耐用年数(40年)の超過率が52.3%(令和5年度末時点)に達しており、大都市比較でも高い水準です(出典:大阪市水道局 水道管の更新(耐震化)の取組について)。1895年から続く全国4番目の歴史を持つということは、もっとも古い管路もそれだけ長く使われてきたということです。蛇口に届くまでの水質維持や、将来の更新投資・料金水準にも関わるテーマであり、府民として注視しておきたい論点といえるでしょう。
水質検査の体制:220項目以上を毎月チェック
大阪の水道水の品質を支えているのは、浄水処理だけではありません。大阪市水道局は220項目以上の水質検査を毎月実施しており、市内21地点の給水栓で実際の家庭に届く水を採水・分析しています(出典:大阪市水道局 水道水質検査結果のお知らせ)。水質検査は水道GLP(水道水質検査優良試験所規範)も取得しており、第三者認定された体制で運営されています。
堺市も同様に水質監視に力を入れており、市内12か所の水質監視ステーションで24時間連続監視を行っています(出典:堺市上下水道局 水質管理)。「水道法の水質基準51項目を必須」とするなかで、大阪市水道局は220項目以上を自主的に検査している点は、品質への姿勢の表れといえるでしょう。
よくある質問
まとめ
かつて「淀川の水はまずい」と言われていた大阪の水道水は、大阪府営水道(現・大阪広域水道企業団)が1998年7月、大阪市水道局が2000年3月に高度浄水処理(オゾン+粒状活性炭)を全量導入したことで大きく変わりました。2011年には大阪市の「ほんまや」が国内自治体飲料水として初のモンドセレクション金賞を受賞し、淀川由来というハンディキャップを越えた水質に到達しています。
大阪府の水道水は、大阪市・大阪広域水道企業団・堺市のいずれもほぼ100%が淀川水系で、近畿圏約1,700万人を支える琵琶湖発の流域に依存しています。硬度は約40〜50mg/Lの軟水で、日本茶・コーヒー・和食のだしを取るのに向く水質です。カビ臭物質(2-MIB・ジェオスミン)は検出ゼロ、トリハロメタンも基準値の約10分の1まで抑えられています。
大阪府の水道水を実際につくっているのは6つの浄水場ですが、なかでも枚方市の村野浄水場は施設能力日量約180万m3の日本最大級。大阪府民の蛇口の大半が、実質的にこの1か所から供給されています。引越し前後で水質が変わる地域もあるなか、大阪府全体が「淀川水系の高度浄水処理を経た水」で統一されている点は、府内移動の場合は安心材料といえるでしょう。
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