神奈川の水道水は山梨から来ている?水源・硬度・浄水技術の意外な真実

本記事の情報は2026年5月時点のものです。水質データ・浄水場情報は各水道事業者の公表値に基づいています。最新情報は各水道事業者の公式サイトでご確認ください。

この記事でわかること
  • 横浜・川崎・神奈川県営水道・横須賀の水道水がどこから来ているか
  • 横浜市の水道水の約8.8%が山梨県道志村から運ばれている理由
  • 神奈川県の水道水の硬度(軟水か硬水か)と全国平均との比較
  • 横浜市・川井浄水場の世界クラスの省エネ浄水技術「セラロッカ」
  • 1876年から続く横須賀「ヴェルニーの水」と150年現役の水源地
  • 4事業者を支える「神奈川県内広域水道企業団」のしくみ
目次

「神奈川の水道水は山梨から来ている」は本当か?

結論から言うと、横浜市の水道水のうち約8.8%は、神奈川県外の山梨県南都留郡道志村から運ばれています。これは横浜市水道局が公表している5系統の水源マップに明記された事実です(出典:横浜市水道局 水源マップ)。なぜわざわざ県境を越えた山村の水を使い続けているのでしょうか。

歴史をさかのぼると、横浜市は明治30年(1897年)から道志川の水を取水しており、大正5年(1916年)には山梨県から道志村の恩賜県有林2,780haを買収しました。これは道志村の総面積(7,968ha)の約35%にあたり、横浜市は現在も水源涵養林(森林)として管理しています。令和6年(2024年)には協定締結20周年を記念して共同宣言を発表しました(出典:横浜市 道志村との交流道志村役場 位置・地勢)。

横浜市が「他県の村の3分の1以上の山林」を100年以上も所有しているなんて、まったく知らなかった。
1村の3分の1以上の山林を一自治体が100年以上保有しているケースは珍しいですね。横浜市は明治期から「水源そのものを買って育てる」選択をしてきました。

横浜市の水源は5系統あり、神奈川県内が大半

道志川の話は印象的ですが、横浜市の水源全体を見ると、約9割は神奈川県内のダム・河川から取水されています。系統別の比率は以下のとおりです。

系統 主な水源 取水量(m3/日) 比率
道志川系統 道志川(山梨県道志村) 172,800 約8.8%
相模湖系統 相模湖(相模原市) 394,000 約20.1%
馬入川系統 馬入川・寒川取水堰 284,700 約14.6%
企業団・酒匂川系統 三保ダム・酒匂川 605,200 約30.9%
企業団・相模川系統 宮ヶ瀬ダム・相模川 499,000 約25.5%
合計 約1,955,700 約100%

出典:横浜市水道局 水道水ができるまで・水源マップ

神奈川の水道水の硬度は?全国平均との比較

水のおいしさを左右する代表的な指標が硬度(mg/L)です。硬度はカルシウムとマグネシウムの含有量を示し、数値が低いほど「軟水」、高いほど「硬水」となります。一般に日本の水道水は軟水で、全国平均は約50mg/L前後とされます。

事業者・水源 硬度(mg/L) 分類
横浜市「はまっ子どうし」(道志川源水) 30 軟水
川崎市(給水栓・最新範囲) 約40〜70 軟水
神奈川県営水道(給水栓・令和7年度) 59〜64 軟水
全国平均(参考) 約50 軟水
出典:横浜市水道局「はまっ子どうし」紹介ページ、川崎市上下水道局 給水栓水質、神奈川県企業庁「おいしい水について」(記事末尾の参考リンクを参照)

神奈川県内の水道水は、いずれも軟水(硬度100mg/L以下)に分類されます。日本茶・コーヒー・出汁文化と相性が良く、ミネラルの強い味が出にくいためどんな料理にも合わせやすいのが特徴です。

県営水道は「おいしい水」7要件をほぼ満たす

神奈川県営水道(12市6町・約284万人が利用)は、厚生省「おいしい水研究会」が示したおいしい水7要件をほぼすべて満たす水質を維持しています。

神奈川県営水道の水質(令和7年度・給水栓)
  • 硬度:59〜64 mg/L(おいしい水基準10〜100)
  • 蒸発残留物:115〜116 mg/L(おいしい水基準30〜200)
  • 遊離炭酸:1.5〜2.2 mg/L(おいしい水基準3〜30)
  • 水温(年平均):17.9〜19.7度(おいしい水基準20度以下)

出典:神奈川県企業庁 おいしい水について

神奈川の浄水技術:日本初・日本最古級が同居する

神奈川県内の水道水を実際に飲める状態にしているのが、各浄水場の設備と技術です。4事業者の浄水場には、日本初・国内最大・日本最古級の事例が同居しているのが大きな特徴です。

注目 1
横浜市・川井浄水場「セラロッカ」(2014年完成)

横浜市旭区の川井浄水場は、2014年の再整備でセラミック膜ろ過方式の浄水場「セラロッカ」として生まれ変わりました。国内最大規模のセラミック膜ろ過施設であり、浄水場全体にPFI(民間運営)方式を適用したのは日本で初めての事例です。さらに、ポンプ電力に頼らず水の位置エネルギー(重力)でろ過する省エネ設計を採用し、敷地内の小水力発電で年間115万kWhを発電しています。処理能力は1日172,800 m3(出典:横浜市水道局 川井浄水場の概要)。

注目 2
横須賀市・走水水源地(明治9年・1876年築造)

横須賀市走水(はしりみず)にある走水水源地は、1876年(明治9年)にフランス人技師レオンス・ヴェルニーが横須賀造船所のために築造した日本最古級の近代水源地です。市内唯一の自前水源として、現在もUF膜ろ過(孔径0.01μm)方式で1日約1,000〜1,500 m3の湧水を供給し続けています。150年経った今も現役で、関東大震災でも機能停止しなかったタフな設備として知られています(出典:横須賀市上下水道局 走水系統)。

注目 3
県営・寒川浄水場(10市3町に給水)

神奈川県営水道の主要浄水場である寒川浄水場は、相模川の寒川取水堰から原水を取水し、凝集沈澱・ろ過・消毒の伝統的な急速ろ過方式で浄水します。供給先は平塚・茅ケ崎・鎌倉・藤沢・小田原・厚木・大和・伊勢原・海老名・綾瀬・寒川・大磯・二宮の10市3町。神奈川県南部の生活インフラを支える要の浄水場です(出典:神奈川県 寒川浄水場)。

4事業者を支える「神奈川県内広域水道企業団」とは

神奈川県内の水道は、表面的には4つの事業者(神奈川県営水道・横浜市・川崎市・横須賀市)が独立して運営しているように見えますが、実際は地下でつながった広域連携で支えられています。それが「神奈川県内広域水道企業団」です。

この企業団は神奈川県・横浜市・川崎市・横須賀市の4団体が共同出資して構成しており、重複投資を避けるために水道用水の卸売(用水供給事業)を一括して担っています。主な浄水場と給水能力は次のとおりです。

浄水場 所在地 施設能力(m3/日) 主な供給先
西長沢浄水場 川崎市 937,700 横浜市・川崎市
相模原浄水場 相模原市 527,600 県営水道・横浜市
綾瀬浄水場 綾瀬市 500,000 県営水道・横浜市・横須賀市
伊勢原浄水場 伊勢原市 220,000 県営水道・横須賀市

出典:神奈川県内広域水道企業団 水道用水を作る

つまり、横浜・川崎・県営・横須賀の各地域で蛇口から出てくる水は、源流レベルで企業団の浄水場を共有しているケースが多いのです。たとえば川崎市の水道水のうち約66.7%は企業団からの受水で、相模川水系・酒匂川水系のダム水(相模湖・津久井湖・丹沢湖・宮ヶ瀬湖の4湖)が混合された水です。多摩川は川崎市内を流れていますが、市の水道用には基本的に使われていません(出典:川崎市上下水道局 水道事業の施設)。

「はまっ子どうし」販売終了後、横浜の水はどこで飲める?

横浜市が誇るボトルウォーター「はまっ子どうし The Water」は、道志川を100%水源とする硬度30mg/Lの軟水。2003年の販売開始から2022年8月まで約20年間で累計約2,300万本を販売しました。しかし、SDGs未来都市への選定とプラスチック削減方針により、2022年8月31日をもって販売を終了しています(出典:横浜市水道局 はまっ子どうし The Water)。

その後継となるのが、市内に整備されたマイボトル給水スポット(マイボトルスポット)です。2026年5月現在、市内508か所に設置されており、約10度に冷やした水道水を無料で給水できます。主な設置場所は市役所・区役所・地区センター・公園・図書館・スポーツ施設などで、市公式の検索サイトから最寄りのスポットを探せます(出典:STYLE100 横浜 マイボトルでおいしい水道水を飲もう)。

よくある質問

神奈川県の水道水はそのまま飲めますか?

はい、神奈川県内の水道水はすべて水道法の水質基準に適合しており、そのまま飲用できます。横浜市・川崎市・神奈川県営水道・横須賀市の各事業者は、給水栓における24時間連続監視や定期的な水質検査結果を公表しています。気になる場合は備え付けの浄水器や水を冷やすだけでも、より飲みやすくなります。

神奈川県の水道水は軟水ですか、硬水ですか?

すべて軟水です。横浜の道志川源水で硬度約30mg/L、川崎市で約40〜70mg/L、神奈川県営水道で59〜64mg/Lと、いずれも軟水の範囲(100mg/L以下)に収まっています。日本茶・コーヒー・出汁など和食文化に適した水質で、ミネラルが強くないため料理の素材本来の味を損ないにくいのが特徴です。

横浜市の水道水は本当に山梨県から来ているのですか?

はい、横浜市の水道水のうち約8.8%は山梨県南都留郡道志村の道志川から取水されています。1897年(明治30年)から取水が始まり、1916年(大正5年)以降は横浜市が道志村の恩賜県有林2,780ha(村全体の約35%)を買収・管理しています。残りの約9割は神奈川県内のダム・河川(相模湖・宮ヶ瀬湖・酒匂川など)から取水されています。

川井浄水場の「セラロッカ」とは何ですか?

横浜市旭区の川井浄水場が2014年に再整備された際の名称です。国内最大規模のセラミック膜ろ過浄水場であり、浄水場全体にPFI(民間運営)方式を適用したのは日本で初めての事例。電力を使わず水の位置エネルギー(重力)でろ過する省エネ設計で、敷地内の小水力発電も併設しています。処理能力は1日172,800m3です。

引越し前に神奈川県の水道水の味を確かめる方法はありますか?

横浜市内に設置された約508か所のマイボトル給水スポットなら、無料で実際の水道水を試せます。市役所・区役所・地区センターなどに設置されており、約10度に冷やした状態で提供されています。引越し先候補のエリアに足を運ぶ機会があれば、立ち寄ってみるのもおすすめです。

まとめ

神奈川県の水道水は、横浜市・川崎市・神奈川県営水道・横須賀市の4事業者が運営しています。各事業者は独立しているように見えますが、源流レベルでは「神奈川県内広域水道企業団」を通じて水源を共有しています。

なかでも特徴的なのが横浜市です。水道水の約8.8%は山梨県道志村から来ており、横浜市は1916年以来、道志村の恩賜県有林2,780ha(村全体の約35%)を所有・管理して水源を守り続けています。県内の水道水はいずれも硬度30〜70mg/L程度の軟水で、和食や日本茶に適した水質です。

浄水技術にも見どころがあります。横浜市の川井浄水場は国内最大規模のセラミック膜ろ過と日本初の浄水場PFI方式を採用し、横須賀市の走水水源地は1876年から現役の日本最古級の水源地です。市販ボトル「はまっ子どうし」は販売を終了しましたが、市内508か所のマイボトル給水スポットで道志川由来の水を無料で味わえます。

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