東京都の水道水はなぜおいしい?水源と水質を解説

東京の水道水って、そのまま飲んでも大丈夫なの?なんか塩素臭がする気がして、ミネラルウォーターを買ってしまっています…
東京の水道水は今や高い品質を誇ります。2013年には、供給量の約8割を占める利根川・荒川水系の全浄水場で「高度浄水処理」の導入が完了して、昔とは別物といっていいほどおいしくなっています。

「東京の水道水はまずい」というイメージを持っている方は多いかもしれません。しかしそれは、高度浄水処理が普及する前の話です。現在の東京の水道水は、高度な浄水技術と、法定基準の約6倍にあたる独自の水質検査によって、毎日そのまま飲める品質を維持しています。

この記事では、東京都の水道水がなぜおいしいのか、水源・浄水処理の仕組み・水質データを軸に解説します。

本記事の情報は2026年5月時点のものです。水質データや検査項目数は変更される場合があります。最新情報は東京都水道局の公式サイトでご確認ください。

この記事でわかること
  • 東京都の水道水の水源(どこから水が来ているか)
  • 「高度浄水処理」の仕組みと、なぜ臭みが減ったのか
  • 東京の水道水の硬度・水質データ(他都市・市販水との比較)
  • 東京都水道局が実施している301項目の水質検査とは
目次

東京都の水道水はどこから来るのか

東京都の水道水は、大きく2つの水系から取水しています。

東京都の主な水源
  • 利根川・荒川水系(約80%):群馬・埼玉の山間部にある奈良俣ダム・下久保ダム・浦山ダムなどが水源。埼玉県内の朝霞・三郷浄水場や板橋区の三園浄水場などで高度浄水処理をおこなう。
  • 多摩川水系(約20%):奥多摩の小河内貯水池(奥多摩湖)が主な水源。羽村取水堰から取水し、都内の浄水場(小作・東村山・境など)で処理する。

水源が複数あるのには理由があります。渇水や水質事故が起きた際に、水源を切り替えたり混合比率を調整したりすることで、安定した給水を継続できるためです。利根川水系のダム群は水量が豊富で東京の大動脈とも言える存在ですが、万一に備えて多摩川水系との二本立て体制が整えられています(出典:東京都水道局 水源の安定確保)。

なぜ東京の水道水はおいしくなったのか―高度浄水処理の仕組み

かつての東京の水道水は「カビ臭い」「塩素の匂いが強い」という声が多くありました。その状況を根本から変えたのが高度浄水処理の導入です。

通常の浄水処理との違い

通常の浄水処理は「凝集沈殿 → 砂ろ過 → 塩素消毒」という3ステップです。これに対して高度浄水処理では、凝集沈殿と砂ろ過の間に「オゾン処理」と「活性炭処理」の2工程が加わります。

STEP
凝集沈殿

薬品を加えて水の濁りを凝固させ、底に沈殿させる。泥や微粒子を大まかに取り除く第一段階。

STEP
オゾン処理(高度浄水処理)

オゾン(O₃)を注入し、カビ臭の原因物質(ジェオスミン・2-MIB)や有機物を分解する。塩素だけでは除去できない臭みをここで取り除くのが最大の特徴。

STEP
活性炭処理(高度浄水処理)

活性炭の無数の微細孔に臭気物質・農薬・微量有機物を吸着させる。オゾンで分解しきれなかった物質をここでさらに除去する。

STEP
砂ろ過

砂の層に通して、活性炭処理で残った微細な炭の粒子や濁りを最終的に取り除く。高度浄水処理では、この砂ろ過で水を仕上げる。

STEP
塩素消毒

蛇口まで安全に届けるために塩素で殺菌する。高度浄水処理後は水がきれいなため、必要な塩素量を抑えることができ、塩素臭が軽減される。

都内浄水場への導入完了は2013年

東京都水道局は1992年に金町浄水場(葛飾区)への高度浄水処理導入を皮切りに段階的に展開し、2013年10月の東村山浄水場完成をもって、利根川・荒川水系の全浄水場への導入を完了させました(出典:東京都水道局 高度浄水処理)。

高度浄水処理を導入した主な浄水場と導入年
浄水場 所在地 導入完了年
金町浄水場 葛飾区 1992年(平成4年)
三郷浄水場 埼玉県三郷市 1999年(平成11年)
朝霞浄水場 埼玉県朝霞市 2004年(平成16年)
三園浄水場 板橋区 2010年(平成22年)
東村山浄水場 東村山市 2013年(平成25年)← 100%達成
2013年以前に東京で暮らしていた人が「最近、水道水がおいしくなった気がする」と感じたとしたら、それは気のせいではありません。高度浄水処理の完成が実際に水の味を変えたのです。

東京都の水道水質データ

硬度:ちょうどよい「軟水」

水の「硬度」とは、カルシウムとマグネシウムの含有量を示す指標です。一般に硬度60mg/L未満を「軟水」、60〜120mg/Lを「中程度の水」、120mg/L以上を「硬水」と分類します。

東京都の水道水の硬度は平均約60mg/Lで、軟水〜中程度の水に位置します(出典:東京都水道局 水のおいしさの秘密)。地域によって最高約90mg/L(練馬区・江東区など)から最低約20mg/L(青梅市など)まで幅がありますが、東京都水道局が独自に設定する「おいしさの目標値」(硬度10〜100mg/L)の範囲内に収まっています。

軟水の特徴は「くせがなくまろやか」な飲み口です。カルシウムやマグネシウムが少ないため、お茶や出汁の旨味成分が引き出されやすく、日本料理にも向いています。硬水が多いヨーロッパではだし文化が発達しなかった一因として、水の硬度が挙げられるほどです。

301項目の水質検査―法定基準の約6倍

水道法で定められた水質基準項目は52項目(2026年4月にPFOS・PFOAを追加)ですが、東京都水道局は独自に301項目の水質検査を実施しています(出典:東京都水道局 高い水質)。これは法定基準の約6倍に相当します。さらに都内131か所の給水栓には自動水質計器が設置され、残留塩素・濁度・色度を毎日モニタリングしています。

また、東京都水道局の水質試験所はISO/IEC 17025の認定を取得しており、検査の精度と信頼性が第三者機関によって保証されています。「蛇口からそのまま飲める水」を実現するために、国の基準をはるかに超えた水質管理体制が構築されているのです。

東京都独自の「おいしさに関する水質目標」

東京都水道局は2004年に、水道法の基準とは別の独自目標として「おいしさに関する水質目標」を設定しています(出典:東京都水道局 水質目標)。

東京都「おいしさに関する水質目標」の主な項目
項目 東京都の目標値 水道法基準
残留塩素 0.4mg/L以下 0.1mg/L以上(下限のみ)
濁度 0.1度以下 2度以下
色度 1度以下 5度以下
有機物(TOC) 1mg/L以下 3mg/L以下
トリクロラミン 0.02mg/L未満 基準なし

特筆すべきは残留塩素の目標値です。水道法は「0.1mg/L以上」という下限しか定めていませんが、東京都は「0.4mg/L以下」という上限も自ら設定しています。高度浄水処理によって水がきれいになった分、殺菌に必要な塩素量を抑えられるようになり、塩素臭を感じにくい水を供給できるようになっています。

他都市・市販ミネラルウォーターとの比較

主要都市の水道水硬度比較

都市 水道水の硬度(目安) 分類
東京都 約60mg/L 軟水〜中程度
大阪市 約40〜50mg/L 軟水
札幌市 約35mg/L 軟水
名古屋市 約19mg/L 軟水

日本の主要都市はいずれも軟水圏に収まります。日本の国土は火山岩・花崗岩質の地層が多く、川の流れが急で水がミネラルを取り込む時間が短いためです。東京の約60mg/Lは日本国内では比較的硬度が高い部類ですが、ヨーロッパの硬水(300mg/L以上)と比べると大幅に低い水質です。

各都市の出典:大阪市水道局(公式FAQ)、名古屋市上下水道局(公式サイト)、札幌市水道局(公式サイト

市販ミネラルウォーターとの比較

「ミネラルウォーターのほうが体によさそう」と思って購入している方も多いかもしれません。しかし硬度という観点では、日本の水道水とどれくらい違うのでしょうか。

水の種類 硬度 東京都水道水との比率
東京都水道水 約60mg/L
エビアン(フランス産) 304mg/L 約5倍
コントレックス(フランス産) 1,468mg/L 約24倍

エビアンの硬度304mg/Lは東京の水道水の約5倍、コントレックスの1,468mg/Lに至っては約24倍です(出典:エビアン公式サイト)。硬水に慣れていない方がコントレックスを飲むと「重たい」「苦手」と感じるのは、このミネラル濃度の高さが理由です。

「水道水よりミネラルウォーターのほうがおいしい」は必ずしも正しくありません。日本の軟水文化に育った味覚にとっては、東京の水道水のまろやかさのほうが口に合う場合も十分にあります。輸入硬水を好む方もいれば、軟水派もいる―水の好みは個人差が大きいのです。

コントレックスが東京の水道水の約24倍の硬度というのは驚きです。「ヨーロッパのミネラルウォーター=おいしい」というイメージは、日本人の味覚に合うとは限らないんですね。

よくある質問

東京の水道水はそのまま飲んでも安全ですか?

安全です。東京都水道局は水道法の法定基準(52項目)を大幅に超える301項目の水質検査を実施し、独自の「おいしさに関する水質目標」も設定しています。塩素消毒は蛇口まで安全に届けるために必要な処理ですが、東京都は残留塩素の上限目標(0.4mg/L以下)を自ら設けて臭みを抑えた管理をおこなっています。

塩素の味や匂いが気になるときはどうすればいいですか?

水を沸騰させると塩素はほぼ除去できます。また、冷蔵庫で数時間冷やしてから飲む方法や、活性炭フィルター付きの浄水器を使う方法も有効です。ただし、高度浄水処理の導入後は以前と比べて塩素量が抑えられているため、感じにくくなっている方も多くいます。

東京の水道水は料理に使っても問題ありませんか?

問題ありません。硬度約60mg/Lと低めの東京の水道水は、だしを引いたりお茶を淹れたりする日本料理に向いています。硬水に多いカルシウムはだしの旨味成分(グルタミン酸など)と結びついて風味を損なう場合がありますが、東京の水道水ではその心配がありません。

多摩地区と23区で水質に違いはありますか?

水源が異なるため、硬度などに微妙な差はあります。多摩地区は多摩川水系(小河内ダム)が主な水源で硬度がやや低い傾向があり、23区は利根川・荒川水系が中心です。多摩川水系はもともと原水の水質が良く、利根川・荒川水系では高度浄水処理を実施しているため、どちらも飲み水として安全で高品質な点は変わりません。

まとめ

東京都の水道水は、利根川・荒川水系と多摩川水系から安定的に供給されています。2013年に利根川・荒川水系の全浄水場で完了した高度浄水処理(オゾン+活性炭)によって、かつての課題だったカビ臭・塩素臭は大幅に低減されました。硬度は平均約60mg/Lと低めで日本料理に向くまろやかな水質を持ち、水質検査も法定52項目の約6倍にあたる301項目を独自に実施しています。

「東京の水道水はまずい」という声は、すでに過去のものになりつつあります。現在の東京の水道水は、高度な浄水技術と厳しい水質管理によって、毎日そのまま飲める品質を保っています。引越しをきっかけに水が気になったなら、まずは蛇口の水をそのまま飲んでみてください。

最新水質データの確認はこちら

水質データは毎年更新されます。最新の検査結果は各公式サイトでご確認ください。

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