各冷蔵庫の取り扱い説明書には必ず「冷蔵庫を設置するときは、必ず放熱スペースの確保をお願いします」のように、放熱についての記述があります。
しかしキッチンのスペースは限られているため、放熱スペースが取れず壁ピッタリに冷蔵庫を置かなければいけない場合も。放熱スペースを確保していないとどんな不具合があるのでしょうか?
この記事では、冷蔵庫の放熱スペースの役割や適切なスペース、上部に物が置ける冷蔵庫などを紹介をしていきます。
冷蔵庫の放熱スペースとは?
冷蔵庫の取扱説明書には、冷蔵庫は上下左右に一定の隙間を空けて設置するように書かれています。
冷蔵庫の中では、「冷媒」という物質がパイプの中を通って庫内と外空間を循環しています。この冷媒が庫内で液体から気体に変わる際に、「気化熱」として周りにある熱を奪うことで、庫内の温度を下げるという仕組みです。
そして、冷媒がまた庫外へ出る前に圧縮器に集められて液体に戻され、外を通る間に庫外へ熱を放出するという流れ。これを繰り返すことで、冷蔵庫内は冷え放熱板からは熱が放出されています。
放熱する場所である面を塞いでしまうと、冷蔵庫が冷えなくなることはもちろん余計な電力で電気代が高くなり、さらには故障の原因になってしまうのです。
冷蔵庫の適切な放熱スペース
冷蔵庫の放熱板箇所は時代とともに変わっており、放熱板が背面にあるものより側面や上部に設置されているタイプに変わってきています。
取扱説明書には側面は0.5~2cm、上部は5~30cmほど隙間が必要だと記載されていることが多いです。昔から比較するとそのスペースもかなり小さくなってきており、デッドスペースもなく、コンパクトに収まるようになっています。
冷蔵庫を設置するスペースによって、隙間を空けられる場所や幅も変わってきます。あらかじめ、冷蔵庫の設置場所や放熱板の位置を確認しておくとよいでしょう。特に一人暮らしなどで設置位置が限られてしまう場合には、注意が必要です。
適切な放熱スペースについては、各メーカーのサイトに記載されています。
ここでは、ドアの数ごとに目安となる放熱スペースを解説します。
3ドア以上の場合
冷蔵庫上部50mm以上、左右5mm以上のスペースが必要です。
引用:https://jpn.faq.panasonic.com/app/answers/detail/a_id/10267/
背面は、基本的には放熱スペースは必要ありません。
ただし湿気が多く壁の結露が気になるときなどは、壁から30mm以上離してください。
またコンセントが背面側にある場合や、振動音・壁の変色・汚れなどが気になる場合も、壁から離して設置してください。
2ドアの場合
冷蔵庫上部30cm以上、左右2cm以上、背面7cm以上のスペースが必要です。
引用:https://jpn.faq.panasonic.com/app/answers/detail/a_id/10267/
上にオーブンレンジなどを置く場合は、オーブンレンジなどの上部・背面からそれぞれ10cm以上のスペースを確保してください。
1ドアの場合
冷蔵庫上部10cm以上、左右2cm以上、背面10cm以上のスペースが必要です。
引用:https://jpn.faq.panasonic.com/app/answers/detail/a_id/10267/
これらを目安として、冷蔵庫の放熱スペースを確保してください。
冷蔵庫の放熱スペースの位置による違い
見たことがある方も多いかもしれませんが、冷蔵庫には必ず「放熱板」と呼ばれる部品がついています。
昔の冷蔵庫の放熱板はほとんどが冷蔵庫の背面に装着されていて、飛び出ているような状態であったため、どこについているか分かりやすいという特徴がありました。そのため、背面のスペースを空けるようにというのが鉄則でした。
しかし時代が進むにつれ、放熱板が背面以外の側面や上部に設置されている冷蔵庫も増えてきました。また、現在の放熱板は外観重視のため、中に設置されており、デザインも損なわないように工夫されています。
メリット | デメリット | |
背面放熱 | 壁と後ろの距離を離さなくてもよい | 設置場所が限られてしまい、不便 |
側面放熱 | 冷蔵庫の両サイドを広く開けておく必要がなく、収納スペースに活用できる | リメイクシートなどにを側面に貼ることで、冷却効率が下がってしまう |
上部放熱 | 側面・背面のスペースが必要ないため、設置場所を選ばない | 冷蔵庫の上にものを載せられない |
冷蔵庫の放熱スペースを確保しないとどうなる?
冷蔵庫の放熱スペースを確保しない場合、下記のようなことが起こるリスクがあります。
- 壁の変色汚れ
- 振動音
- 冷蔵庫の冷却効果の低下
- 電気代UP
- 湿度温度上昇によるカビ発生
- 湿気によりゴキブリなどの害虫発生
冷蔵庫の裏には静電気が発生しやすく、その静電気にホコリや油が集められて、冷蔵庫の裏が真っ黒に汚れてしまうというリスクがあります。その上そのほこりや汚れ、湿度によってカビやゴキブリなどの害虫発生のリスクもあるため注意したいところ。
それだけではなく、冷蔵庫の裏や側面などに付いたほこりが放熱を妨げる原因にもなってきます。
冷蔵庫は熱を放熱させることで庫内を効率良く冷やす仕組みなので、放熱部分が塞がれていると庫内の冷えは弱くなってしまい、冷却効果が低下します。冷却効果が低下すると、庫内が冷えなくなるので冷蔵庫は必死で冷やそうと余計な電力を使い、電気代UPにも繋がります。
さらに、隙間を作らないと壁と冷蔵庫があたって振動音も大きくなってしまいます。このように、衛生面、生活音面、生活費用面でさまざまな弊害が出る恐れがあります。
上部に物が置けるおすすめ冷蔵庫
放熱板が上部に設置されていない冷蔵庫であれば、冷蔵庫の上に電子レンジやトースターを設置してスペースを有効活用できます。特に一人暮らしの住まいでは広さも限られているため、少しでも住空間を広く使えるよう上部に物が置ける冷蔵庫がおすすめです。
各家電メーカーから販売されている冷蔵庫の中から、上部に物が置ける製品を紹介します。
パナソニック
パナソニックの冷蔵庫の中で、天井耐熱式の冷蔵庫は「NR」シリーズです。幅48cmの置きやすいスリムタイプから少し大きめの2ドアで168Lのものまで揃っています。
特徴としてはどれも中の食品が見やすいようにLED対応となっていることです。機種によっては、ホームフリージングに便利な急凍機能付きや最下段には500ml凍結用ボトルや背の高い食品が立てて入るようなものもあります。
上部に物が置ける機種は以下のものになります。
- NR-FZ120D
- NR-B17FW
- NR-B14FW
- NR-B17DW
- NR-B14DW
- NR-B14AW
- NR-B14CW
シャープ
シャープの冷蔵庫の天井耐熱式の冷蔵庫は「SJ-D」シリーズです。
幅は48~50㎝の間で非常にスリムなボディでありながら、容量は、128L~179Lまでを選択できる幅広いラインナップが魅力です。137L以上の容量であれば、つけかえどっちもドアが可能なものや、霜取不要のファン冷却式のものもあります。
上部に物が置ける機種は以下の製品です。
- SJ-D18シリーズ
- SJ-D17シリーズ
- SJ-D15シリーズ
- SJ-D14シリーズ
- SJ-GD15シリーズ
- SJ-GD14シリーズ
- SJ-H13E
◆シャープの一人暮らし向け冷蔵庫は、こちらの記事で詳しくご紹介しています。ぜひ参考にしてください。
日立
日立冷蔵庫の天井耐熱式の冷蔵庫は「RL」シリーズです。幅479×奥行き580×高さ1270mmのタイプで154L容積と、一人暮らしにもちょうどいいサイズ感です。
機種によっては、汚れを拭き取りやすいガラス棚を採用しているものや霜取り不要の間冷式のもの、冷凍室がスリースターの冷却機能を搭載しているものなどがあります。
上部に物が置ける機種は以下の製品です。
- RL-154KA
- RL-154NA
- RL-154RA
東芝
東芝の天井耐熱式の冷蔵庫は「GR」シリーズです。153Lか170Lの容量のものがありますが、大きさはすべて幅479x高さ1369x奥行582です。掃除も簡単なガラス棚や、整理しやすい3段ドアポケットといった装備が特徴で、省エネ基準100%達成しているものもあります。
上部に物が置ける機種は以下の製品です。
- GR-T15BS
- GR-T17BS
- GR-S17BS
- GR-S15BS
ハイセンス
ハイセンスの天井耐熱式の冷蔵庫は「HR」シリーズです。大きさは、幅439x高さ510x奥行470 mm~幅481x高さ1279x奥行583 mm程度で、幅のスマートである点や高さの種類が豊富である点が特徴です。容量は42Lというかなりコンパクトなサイズから168Lという大容量のものまで選べます。
黒みを帯びたミラードアでおしゃれな製品から、間冷式(ファン式)を搭載した霜取り不要な製品、6種類の温度設定の切り替えができる製品など、見た目や機能のニーズに合わせて選べます。
上部に物が置ける機種は以下の製品です。
- HR-D15F
- HF-A61W
- HR-D16F
- HR-G16AM
- HR-G13C
- HF-A16S
- HR-A42JWS
- HR-D15A
- HF-A81W
- HR-B95A
アクア
アクアの天井耐熱式の冷蔵庫は「AQR」と「AQF」シリーズで、選べる製品ラインナップが豊富です。幅557x高さ882x奥行651mm(100L)のかなりコンパクトなものから、幅600x高さ1419x奥行657(272L)の大容量のものまであり、暮らす人数に合わせて選べる点もメリット。
冷凍食品をたっぷりストックできる「58L大容量冷凍室」や全段強化処理ガラス棚など、うれしい装備を備えています。また、静音設計(約25db)に優れている製品や、ワイドタイプのオーブンレンジが置ける「幅52.5cm&耐熱100℃テーブル」を採用している製品などもあり、それぞれの家庭が求める機能や装備に合わせて冷蔵庫を選べます。
上部に物が置ける機種は以下の製品です。
- AQR-13M
- AQR-20M
- AQR-27K
- AQR-27M
- AQR-17M
- AQR-SV27M
- AQF-GS13M
- AQF-GD10M
- AQR-SV24K
- AQF-GS13J
- AQR-SV27K
- AQF-GS15M
- AQR-27M2
- AQF-GS15J
- AQF-GD10J
◆冷蔵庫の上に電子レンジを置く場合の注意点などは、こちらの記事で詳しく解説しています。
冷蔵庫の放熱スペースを守って適切に使用しよう
冷蔵庫の放熱のためには、放熱スペーを必ず確保しましょう。壁が汚れたり、冷蔵庫の冷却効率が悪くなったり、電気代が上がったりと、放熱スペースを空けていないことによるデメリットはたくさんあります。
最近の放熱板は見えにくくなっているものが多いため、どこに放熱板が設置されているのかは必ず確認しておく必要があります。またこれから冷蔵庫を購入しようと考えている人は、あらかじめ設置場所と放熱スペースの兼ね合いを考慮しながら、製品を検討すると失敗も少ないでしょう。
◆放熱スペースとして作った冷蔵庫と壁の隙間は、うまく使えば収納スペースとして活用できます。詳しくはこちらの記事をご覧ください。